セ・リーグもDH制を導入するべきか

2020年12月23日 14:00

野球

セ・リーグもDH制を導入するべきか
日本一を決め喜ぶソフトバンクナイン(撮影・中村 達也) Photo By スポニチ
 【君島圭介のスポーツと人間】結論から言えば、導入した方がいいと思う。陸上競技の花形種目は100メートルであり、マラソンであることに異論はないだろう。ボクシングなら一番多くのファンを興奮させているのはヘビー級だ。
 何故か。いずれも「究極」だから。もちろん200メートル、400メートルの王者が劣っている訳ではない。彼らのコーナーリングの技術、無酸素状態での筋持久力の維持は「究極」だ。私も個人的には1万メートルやハードル競技が好きだ。だが、やはり五輪や世界陸上で100メートルの決勝を見逃したことはない。

 ボクシングは当初、無差別階級で行われていた。結果、体格差がすべての殴り合いになり果てた。選手の安全を守り、スポーツとして生き残るため、階級制度が19世紀後半になって導入された。当初は5階級だったが、現在は17階級と細分化された。階級が増えたことの賛否はあるが、体格差で補えない部分は技術で埋めることになった。それでもヘビー級が一番人気を集めるのは、「本当に一番強いのは誰か」を教えてくれるからだ。

 DH制のないセ・リーグでは、バットを振る意思のない投手にも、3球以上投げないといけないし、見る側も楽しめない。無駄な「アウト」でしかない。しかも継投策に入った試合後半になると打線が崩れる。ときには終盤に「4番・投手」となる。投手と打者による力と力、技と技の「究極」の勝負をより楽しむにはDH制の方が効率がいい。かつて川上哲治氏はDH制を「邪道に走る」と懸念したが、野球が21世紀以降も生き残るには必要な進化だったのだ。

 アメリカンフットボールではNFLはもちろん、大学チームにもキッカー専任の選手がいる。蹴ることに特化した「究極」の存在。米国の合理主義が生んだ超人気スポーツの象徴的ポジションだ。同じ米国発祥の野球だからDH制もキッカーと同じと考えれば納得もいく。

 ただ、枠を作ればぶち壊してくれる選手も現れる。ボクシングではオスカー・デラホーヤやマニー・パッキャオは主要タイトル6階級を制覇した。陸上でも複数競技で頂点に立つ選手は多い。セ・パ両リーグともにDH制が導入されたら、投手は投げるだけの存在になってしまうのか。そうとは言い切れない。我々は、大谷翔平という「究極」を目の当たりにしたではないか。(専門委員)

おすすめテーマ

2020年12月23日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム