吉田正尚 一撃必殺で千賀を手玉に

2021年01月18日 09:30

野球

吉田正尚 一撃必殺で千賀を手玉に
ソフトバンク・千賀(手前)か適時打を放つオリックス・吉田正 Photo By スポニチ
 【宮入徹の記録の風景】ソフトバンクの絶対エースを苦もなく打ち込んだ。昨年、オリックスの吉田正は千賀に対して16打数8安打、打率・500と攻略した。通算でも41打数19安打(打率・463)。日本球界屈指のエースを粉砕している。千賀は19年に奪三振率11・33のプロ野球新記録を樹立。昨年も11・08で歴代2位と1、2位を独占した。その剛腕に対し、喫した三振はわずか4。3球三振は1度だけと対応力は極めて高い。
 昨年は千賀との対戦で各打席の最初のスイングが空振り、ファウルにならず打球となった場合、7打数6安打(打率・857)、1本塁打、4打点と驚異的な成績を残した。昨年の吉田正は2ストライクに追い込まれてから169打数51安打、打率・302と両リーグ規定打席以上の57人中、唯一3割を超えた。ただし、千賀に対し2ストライクからは9打数2安打の打率・222と良くなかった。こと千賀に対してはファーストスイングできっちり仕留められたことが高打率につながった。

 また、昨年の吉田正はファウルの数が227で、パ・リーグ規定打席以上の打者では最少。首位打者獲得年にリーグ最少ファウルは08年内川聖一(横浜)以来。パでは吉田正が初のケースになった。高いスイング精度がこうした数字から読み取れる。

 さらに、昨年パ・リーグで規定投球回に到達した投手は8人いたが、同僚の山本、田嶋を除く6投手との対戦成績は69打数29安打の打率・420。最も打率の高かったのは美馬(ロ)で・556、最も低かった有原(日)でも・308と6投手全てから3割以上の打率を残した。エース級を軒並み打ち崩したのだから胸を張れる。

 ところで、吉田正と千賀の関係で思い出すのが、90年代の落合博満(中日、巨人)と“大魔神”佐々木主浩(大洋、横浜)との対戦。佐々木は真っ直ぐとフォークを主武器にストッパーとして通算252セーブを挙げ、通算被打率は・188と2割未満の難敵。だが、落合は同投手に対し通算36打数16安打(打率・444)と全く苦にしなかった。吉田正と内容面で違うのがセカンドスイングの数字。ファーストスイングでは17打数8安打(打率・471)だったが、セカンドスイングでは11打数7安打(打率・636)と正確さが増した。落合が佐々木と初対戦したのは佐々木が大洋でプロデビューした90年で落合は当時37歳。既に史上最多となる3度の三冠王を手にしており、円熟期の技術と捉えれば納得がいく。

 吉田正に話を戻すと、入団1年目の16年から打率は・290→・311→・321→・322→・350と年々上昇。今季は入団6年目で28歳シーズンを迎える。過去に2年連続打率・350以上で首位打者は85、86年にバース(阪神=・350、・389)、落合博満(ロッテ=・367、・360)と2人しかいない。吉田正が達成すれば史上3人目。成長を続けるクラッチヒッターはどんな数字を残すだろうか。(敬称略)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。

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