【大学スポーツ】「立教スポーツ」編集部
立教大学【全日本大学野球2回戦】北東北王者・富士大撃破!59年ぶり全日本1勝
2017年06月08日 05:30
野球
東京ドームのマウンドに深く一礼し、男はマウンドに上がった。春季リーグ戦ではリーグトップの投球回と、最も神宮球場のマウンドに立った背番号「11」。この日も、リーグ戦の投球さながらに、130キロ台の直球と、緩急をつけた変化球で富士大強力打線から凡打の山を築いた。序盤こそ相手打線の力強いスイングで打球を外野に運ばれるものの、回を追うごとに空振り三振が増える投球は、彼が相手打線を上回る地力を持っていた何よりの証。6回に不運なあたりから2失点をするも、続くピンチは富士大の主将・小林(4年=仙台育英)を落ちる変化球で三振と要所は締め、表情を変えずにマウンドから淡々とおりていく。来る打線の援護を待ち続けた。
「たまたま打てました」。彼の試合後のこの一言ほど矛盾している言葉はない。残すイニングも少なくなり、是が非でも得点がほしい7回。先頭の山根(営4=浦和学院)がきれいな右前安打で出塁すると、チーム一の努力人・大東は打席へと向かった。その初球。「狙っていた」直球をフルスイングした打球はきれいな弧を描いて右中間スタンドに突き刺さった。まさに起死回生の同点本塁打。いつもはクールな彼も、今日ばかりは笑顔でダイヤモンドを一周した。リーグ戦までにない指名打者での起用。「あらゆるパターンを考え迷いましたが、最も経験のある彼に決めました」(溝口監督)。慣れないポジションにも、満点の回答で起用に応えてみせた。
これで立大打線に火が付いた。飯迫(社3=神戸国際大附)の押し出し死球で1点を勝ち越すと、主砲の笠松が適時2塁打。打線は止まらず、終わってみれば打者12人4安打5四死球6得点の猛攻。落ち着いて得た四球から本塁打まで、今季の立大打線の特長が見事に詰まった1イニングで試合を決定づけた。
そして迎えた最終回。最後までマウンドを守った田中は、最後の打者・小林を捕邪飛に打ち取ると、渾身のガッツポーズ。9回を散発5安打、10奪三振とまさにエースの投球であった。「東京ドームで投げるのは本当に楽しかった」と楽しむ余裕も見せる。試合後、笑顔で試合を振り返りつつ、最後に次戦以降に向けてこう語った。「明日の手塚(コ2=福島)は本当に信頼しているし、されている。一戦ずつ勝って、絶対に優勝します」。明日、立大は舞台を神宮球場に移し、阪神大学野球連盟の天理大と対戦する。各リーグの王者が激突する今大会。今日のチームからは、優勝を力に変え戦う、まさに東京六大学王者の貫禄が漂っていた。日本一まで、あと3勝だ。(6月7日・川村健裕)