文芸、五輪…ジャンル超えた市川映像美

2008年02月13日 19:54

芸能

 文芸大作から時代劇、エンターテインメントからドキュメンタリーまで、ジャンルを超えて独自の映像美を追い続けたのが、市川崑監督の映画人生だった。イデオロギーや主義主張などどこ吹く風と、徹底してスクリーンに語らせるスタイルにこそ、独自の美学があった。
 戦後、メロドラマながら都会的センスあふれる作風で、本格的な監督業をスタート。「ビルマの竪琴」「炎上」といった1950年代の文芸路線でも、一作ごとにスタイルを工夫し、原作とは独立した映画に仕立てた。
 そうした実験精神が開花したのが、65年のドキュメンタリー「東京オリンピック」。当初予定されていた黒沢明氏に代わっての総監督だった。望遠レンズを駆使し、競技や勝敗よりも選手の人間性を見つめた斬新な映像は、今も輝きを失っていない。
 その後も、シャープな画像、光と影のコントラストに独自のセンスを発揮。新感覚の時代劇「股旅」や、「犬神家の一族」をはじめとするミステリーシリーズ、山口百恵、吉永小百合らの記念映画など、さまざまな企画を引き受けつつ、常に新しい表現を盛り込み、見事な職人ぶりを発揮した。
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