松本幸四郎「勧進帳」千回公演へ巡演開始
2008年09月01日 06:00
芸能
「人の心を動かすのが難しい昨今、役者はそれを商売にできる。うれしいことですね」。終演後、幸四郎は、まだ息を切らしながら笑った。
数年に1度、約1カ月にわたり全国を回るが、今回はこれまで以上に気合が入っている。それは一大イベントが控えているからだ。平城遷都1300年記念行事の一環で、10月15日に東大寺大仏殿前で奉納歌舞伎「勧進帳」を上演するのだ。「きょうから少し気分が違う。感慨深い」と話した。
当日は、弁慶を演じて1000回目の自身にとっても記念の公演。「大仏さまの歴史に比べたら1000回なんて。大仏さまがまばたき1回するようなものですよ」と謙そんしながらも「共演者や裏方さん、誰が欠けてもできなかったこと。僕的には奇跡です」と、晴れの日を心待ちにしている。
祖父の七代目幸四郎は、明治末期から昭和21年まで「勧進帳」を1700回演じた、まさしく“弁慶役者”。「1000回を超えたらどうしようかな。気が抜けるかなあ」と幸四郎。「勧進帳」は東大寺再建を題材にした演目だけに、節目の記録には最高の舞台となる。