遠藤さん 死の間際まで衰えぬ意欲

2008年12月06日 12:56

芸能

 座右の銘は「春の来ない冬はない」。六日死去した作曲家の遠藤実さんは、死の間際まで音楽への情熱を燃やし続けていた。少年期、極貧の中で見た疎開先新潟の自然が豊潤なメロディーの源だった。
 戦争で父が寝たきりになり、疎開先の新潟市で育った。母が枯れ葉を集めて炊事するほど厳しい日々。弁当は生の大根。「よく人はゼロから出発すると言うが、僕はマイナス十からのスタートだったんだよ」と生前のインタビューで語った。
 ある日、ラジオでドボルザークの交響曲「新世界より」を聞いた。「体に光が走った。気付けば涙が出ていた」。音楽に目覚めた瞬間だ。
 島倉千代子さんのアルバム用に十数曲を一晩で書き上げたり、森昌子さんの「せんせい」を歌詞を見た瞬間、5分で作ったりと“伝説”も多い。
 「メロディーは電気と同じで、ためることはできず、流れてしまう。心に発色がなければ、いい曲は書けないんだよ」
 創作の源となった新潟の田園風景。「カエルが鳴くのどかさ。真っ暗な闇に降るような星の光。もう歌の世界にしか残されない光景なのかなあ」と嘆いていた。近年は「クラシックやオペラに挑戦したい」と語り、作曲活動を続けていた。
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