夏八木勲 初受賞喜びながら…震災、核、亡き友を思う
2013年01月18日 06:00
芸能
「希望の国」は東日本大震災から数年後が舞台。再び起こった大地震が誘発した原発事故を題材に、園監督が放射線という“見えない恐怖”におびえ、絶望的な日々を余儀なくされた人々の心に焦点を当てた衝撃作だ。
演じたのは認知症の妻、息子夫婦とつつましくも平和に送っていた日々を国の避難指示によって暗転させられる酪農家。撮影前には被災地の酪農家を訪ね、生活ぶりを肌で感じてきた。「職業こそ違え、同じような状況に陥った方はたくさんいらっしゃる。気持ちの上では、そうした人々の代表として取り組みました」
一昨年の「3・11」は神奈川県内の自宅にいたという。「津波が押し寄せたり原発が爆発する映像は、円谷英二さんの“ゴジラ”の特殊映像の世界のように感じ、リアルなものとは信じられなかった。そんな思いが吹っ飛んだのは実際に被災地を訪れた時。町の痕跡があとかたもなくなって…」と言葉も失った。
「1945年に広島と長崎に原爆が落とされ、その後、地上、地下、海中、そして宇宙空間でも核実験が行われてきた。つまり地球そのものが汚染されているということ。見えもしない、においもしない、触れもしない。これほど不気味なものとどう向き合うのか。腹をくくらなければならない。不幸を経験した日本がリードしていかなければいけないのではないか」
俳優座養成所の花の15期生。「原田芳雄、地井武男、劇作家の斎藤憐とここ2年で3人も失った」と寂しそうな顔を見せたが、仲間たちも天国から祝福しているはずだ。