「深夜食堂」ドラマと映画“味付け”の違いは…マスター小林薫が語る
2015年01月30日 12:00
芸能
「大人のメルヘン。ありそうでないんですよ、こんな理想的な店。実際にやろうとしても、そうはいかないしね」という愛着ある“自分の城”。ドラマは09年にスタートし、6年目を迎えた今回、ついに映画化された。「監督もスタッフも映画の方。想像するに、どこかで映画化の話が出てくるのかな、僕よりはその気持ちがあるのかなとは思ってました」という。
松岡監督やスタッフはドラマ版の収録終了後、劇場版撮影に入るまで約2週間の仕切り直し期間をとった。そして、最初にレギュラー陣が集まった時に「監督が役者全員に“間をとりたかったら開けていいよ”と初めていった」。その時、小林も監督の、ドラマ版とは異なるものに仕上げるという“決意”を感じたそう。実際、作品中には至る所に「これはなくてもストーリーは成り立つ。でも、そこをあえて入れる」(松岡監督)ような“遊び”の要素を盛り込んだ表現やシーンが随所に散りばめられている。
起承転結をコンパクトにまとめ、決まった時間枠内で視聴者を納得させる必要があるドラマに対して「(時間的に)詰めてって言わなくていい。見て、何だかよくわからないけど面白かったっていうのが映画」が持論。また、「あえて答えがでてこなくても、いろんな受け止め方をするお客さんがいて、そこでキャッチボールができる。受け止め方によって幅が出る」とも。言葉の端々に、映画への熱い思いがにじみ出る。そんな立場で見ても、未完成版の試写を最初に見た時に「“あっ、監督、映画にしたなあ”と思った」という。
「僕なんかからすると映画は高級感があるもの。軽自動車の運転していたのから2、3000CCの車を運転するような違いがある」とも。それだけ馬力が違うなら、小林演じるマスターにも何か変化があったのか…と問うと「僕自身?それはおかしい、この映画でオレが妙に張り切っていたら。そういう役割なんで」と一笑に付された。同席した松岡監督も、それを変えたらこの作品は終わりとばかりに「マスターは変わらない。性格も人間性は変わらない」と横で相づちを打つ。
ぶれないマスター、そこに映画ならではな“スパイス”を効かせたのが劇場版「深夜食堂」ということか。「ドラマを見てくれたファンもそうでない方も一回ドアを開けてみたくなる作品。マスターの“いらっしゃい”というセリフを聞きに来てほしいですね」と語る小林の瞳から“シェフ”としての出来映えの自信が感じられた。