「下町ロケット」佃VS椎名最終決戦 最終回前日の極限の撮影現場
2015年12月20日 11:30
芸能
最終撮影は18日午後10時すぎにスタート。まずはドライ(カメラを回さないリハーサル)。テーブルで対峙する阿部と小泉が立つのか座るのかなどが確認された。
午後11時15分、本番1回目。福澤組は同じシーンを繰り返し、異なる角度から何度もセリフを通して撮るのが特徴。2人の引きの画で2テイク。2人の寄りの画、阿部がメーンの画、小泉の背中越しに阿部の顔に寄った画を撮影すると、今度は――。小泉がメーンの画、阿部の背中越しに小泉の顔に寄った画と、果てしない。ある種、舞台中継。生の臨場感。そして、テイクを重ねるうちに芝居が極まる。こうして撮られた、あらゆる表情からチョイスして一連の流れに編集。福澤監督十八番の「顔芸」も、ここから生まれる。福澤監督は自ら編集作業も担う。
当初の撮影終了予定だった19日午前1時半をとうに過ぎ、午前2時45分。ここでようやく休憩を挟んだ。
TBS「半沢直樹」などを手掛けた伊與田英徳プロデューサーは最終回前日の撮影について、自身のプロデュース作品のうち「最もタイトなスケジュール」と明かす。なおかつ、ヤマ場を最終撮影に持ってきたのは「オーラスでやるのは、気持ち的には悪くない。『これで最後!行くぞー!』と。もちろん、役者さんがギリギリのところで深夜から未明に演技をするのがベストかと言われれば、ベストじゃないです。でも、こう言うと怒られるかもしれませんが、ギリギリだからこそ伝わってくる迫力がにじみ出ているというのはあるんじゃないかという気はします。うちの事情で、この時間になってしまったことは半分、申し訳ない。でも、半分はすごくいいお芝居をしていただいているという感じはします」という効果もあった。
「こういうギリギリの環境になってしまったものの、ここにいる人(役者・スタッフ)たちは、それでもあきらめない。『眠いから、この辺で終わろうか』ということなどはなく『最後まで、いいものを作るんだ』と頑張る人たちに恵まれていて、ある種、佃製作所に似ています。そういう人たちが作った最終回を、ぜひとも皆さんに見ていただきたいと思います」
撮影は午前3時10分に再開。ロケ地となったビルの中に、阿部と小泉の怒号が響き渡る中、午前4時半すぎ、ついにオールアップ。6時間に及んだ最終決戦の撮影は終了した。撮影が始まる前、福澤監督は「オンエアに間に合わない」と本気とも冗談ともつかない言葉を口にした。それでも最後まで撮影スタイルを貫いた。
花束を受け取った阿部は約40人のスタッフを前に「皆さんが毎日、寝られない姿を見ているだけで、逆にこちらが生命力をもらって、役者に乗り移って、みんな集中して仕事ができる現場でした」と感謝。小泉も「阿部さんやスタッフの皆さんが寝る間を惜しんで闘っている姿を見て、初の悪役・椎名という役にエネルギーをもらいました。大変な現場でしたが、愚痴をこぼすことなどは一切なかったです」と口を揃えた。
劇中の「佃品質」ならぬ「伊與田&福澤品質」。作品が視聴者を魅了してやまないのは、作り手の情熱にあった。