「真田丸」スピンオフ動画が話題 江口カン氏傑作「ダメ田十勇士」29日放送

2016年02月26日 10:00

芸能

「真田丸」スピンオフ動画が話題 江口カン氏傑作「ダメ田十勇士」29日放送
NHK大河ドラマ「真田丸」のスピンオフ動画「ダメ田十勇士」の1場面(C)NHK
 NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)のスピンオフ動画「ダメ田十勇士」が話題を呼んでいる。異例の大河ドラマのPRムービーとして制作され、昨年12月にYouTubeで公開されたが、笑って泣けると評判に。今月29日午後10時35分からはNHK総合で地上波プライムタイム放送される。動画の企画・脚本・演出を務めた映像作家・江口カン氏は「難しいということは、突破すれば誰もやったことがないものになる」と取り組み、傑作を生み出した。
 本編「真田丸」には登場しない名もなき8人の“勇士”を描く「ダメ田十勇士」。慶長20年(1615年)、大坂夏の陣の開戦前夜。8人の足軽たちは豊臣方の陣の片隅で酒盛りをしていた―。出演は博多華丸(45)矢本悠馬(25)岩井秀人(41)鈴木拓(40)脇知弘(35)梅垣義明(56)松村邦洋(48)Mr.オクレの8人。

 動画としては大作の13分9秒。2分版もあり、NHK総合で過去7回放送。最も早かったのは昨年12月28日の深夜0時13分と、いずれも深夜帯でオンエアされた。13分のロングバージョン(完全版)はNHK総合で過去2回放送(1月10日深夜2時35分、2月6日深夜3時52分)。3回目の今回は最も浅い時間で、しかもプライムタイム(午後7~11時)に昇格。江口氏は「そもそも“裏な人たち”の話。表舞台に出ることになり、親としてはうれしい限りですね」と喜んだ。

 そもそも、なぜPR動画を作ることになったのか。ドラマ本編の映像を使わない宣伝方法を探る中、NHKの清水拓哉プロデューサーは商品そのものは隠しながら注意を引く「ティーザー広告」の手法を使おうと考えた。

 2009年、相模ゴム工業のコンドームのCM「LOVE DISTANCE」でカンヌ国際広告祭グランプリ(金賞)を受賞し、九州発として話題を呼んだドラマ「めんたいぴりり」(13年)の監督などで知られる江口氏に白羽の矢。江口氏は昨年、街中の人たちが突如野球を始めるトヨタ自動車のティーザーCM「TOYOTA G’s Basaball Party」を企画・演出。清水プロデューサーはすぐに江口氏が思い浮かんだ。

 清水プロデューサーはさらに「どんなに放送で大河ドラマを宣伝しても、そもそもNHKを見ていただいている人にしか伝わりません。今回は三谷幸喜さん脚本の娯楽活劇。普段は大河ドラマを見ないような若い人たちにも見てほしい。それなら、インターネットで話題にならないといけないと思いました」とネット動画戦略の狙いを語った。

 「真田丸」の登場人物は使えないというのがPR動画の条件。江口氏は真田十勇士を題材にしようとしたが、ドラマに登場する佐助(藤井隆)がネックになり、いったんはあきらめたが「佐助以外というのもあるなと、どこかで開き直ったんですよね」。その後、ダジャレ的に「ダメ田十勇士」という言葉が出て「大河ドラマで扱われる人物って、エリートたちですよね。結果を残した人たち。じゃ、エリートじゃない人たちの話はどうか」とストーリーなどが決まっていった。

 昨年下半期で「一番悩んだけど、楽しかった仕事」という難産。江口氏は「いつもそうなんですが、自分には変なところでポジティブシンキングなところがあって。難しいということは、突破すれば誰もやったことがないものになると、いつも思っています。それで一生懸命、粘るのは粘るんです。ダメな時もありますが、難しいと思えば思うほど、突破したくなる。誰もそこに手を付けていないということなので。大河ドラマを応援するムービーを作ってYouTubeで流そうということ自体が、そもそもNHKさんとして画期的じゃないですか。そこがまず、おもしろいと思いました」と振り返り、自身の映像制作ポリシーを明かした。

 昨年夏から取り掛かり、完成までに半年かかった。当初は3分程度の予定だったが、13分の大作に。数々のCMを手掛けてきた江口氏だが、YouTubeなどの映像は3分を超えると、視聴されるのが難しくなると言われる。「なので、今回の13分の尺(分数)は実験的で、やや怖かったんです」というが、好反響に「尺の神話みたいなものは、あまり関係なかったんだなと。あまり信じ過ぎない方がいいなと思いました。じゃないと、新しいものが生まれませんからね。ネットはいろいろなものがあるからおもしろいわけで、それが3分神話みたいなことで縛られちゃうと、ネットで見るものの本来の魅力と違ってくるんじゃないのかなと。もちろん見られやすい尺はあると思いますが、自由でいい」と語った。

 清水プロデューサーは「高揚というところから、もう一歩進んで感動まで行っている」と「ダメ田十勇士」を絶賛。「ある程度の尺で見せないと、なかなか感動には到達できない。13分の尺だからこそ本格感が出て、独立した作品として存在するんだと思います」と分析した。今月29日の地上波プライムタイム放送で、さらに認知度が高まりそうだ。

この記事のフォト

【楽天】オススメアイテム