月9「ラヴソング」吃音を題材にしたワケ 藤原さくらが熱演
2016年04月18日 11:07
芸能
さくらは広島の児童養護施設で育ち、今は中古車整備会社「ビッグモービル」で整備補助として働く。人とコミュニケーションを取るのが苦手で、職場の同僚ともなじめない。この会社に企業カウンセラーとして週2日勤務するのが神代だった…。
フジテレビの草ヶ谷大輔プロデューサーによると、ドラマの重要なテーマの1つが「音楽」。そこからヒロインの人物像を考えるにあたり、豪女性歌手ミーガン・ワシントン(30)がヒントになった。ミーガンは吃音だったが、歌う時には言葉に詰まることがなく、自分の気持ちを表現し、伝えられる。彼女に触発され、今回、音楽と出会って希望を見いだすというヒロイン・佐野さくらが生まれた。
ドラマの吃音監修は、吃音のセルフヘルプグループ「言友会」の中央連絡機関「全国言友会連絡協議会」が担当。言友会の川端鈴笑さんが吃音指導を務めるなど、全面的にバックアップしている。
草ヶ谷プロデューサーは「表面的にならないように、吃音の人が抱える悩みへの理解を深めた上で芝居をしてほしいというのが第一にありました」と、藤原と言友会への取材を重ねた。第1話にあった「親友から結婚式のスピーチを頼まれる」というエピソードを、実際に体験した吃音の女性がいた。その女性は悩み抜いた末に友人に迷惑を掛けたくないと断ったが、今は後悔していると感極まり、藤原はもらい泣き。内面的なアプローチが演技に生きるように腐心した。
その中、藤原が偶然に出会ったのが同じ20歳、同じ福岡出身の川端さんだった。
川端さんは吃音がドラマの題材になることに「凄くうれしかったです。ドラマという大きな媒体で広まり、まずは吃音のことを知ってもらえるだけで、うれしいと思いました」。藤原とは吃音を隠さず、普段通りに会話。次に川端さんが台本を読む様子をビデオに撮り、藤原がそれを見て役作りに生かす。最後は川端さんがリハーサルや撮影現場に立ち会い、直接指導する。
川端さんは「言葉に詰まると、内心焦ったり、悔しかったり、悲しかったり。自分を責める時の方が多いです。(藤原)さくらちゃんはそういう感情を体の動きで表現できていて、グッと来ました」と絶賛する。
藤原は「自分がちゃんと吃音のことを理解していないと、演じる上で失礼だと思いますし、ドラマを見て不快な思いをする人がいたら嫌だったので」と、言友会への取材のほかに小説や映画で吃音のことを猛勉強。「撮影をしているうちに、本当に言葉が出ないつらさが分かる瞬間がありました。そこが分かるようになってきたのは、自分にとって大きな一歩になったと思います」と難役に手応えをつかんだ。
川端さんとの“運命”の出会いも「大きかったです」と振り返る。今やプライベートで川端さんの自宅を訪れ、ギターを教えるなどして遊ぶ仲。「凄く気が合って、友達になれて、いろいろ教えてもらいました」。
第2話(18日放送)以降、佐野さくらの吃音は音楽療法で快方に向かうのか。草ヶ谷プロデューサーは「単純に症状が良くなる、治るというドラマとは違います。佐野さくらが吃音と向き合い、受け入れ、音楽という自分の表現方法を知り、成長していく物語です」と強調。川端さんも「そこがいいですよね。治るのがゴールじゃないところが凄くうれしいです」と応じた。
「最終回で治る展開だったら、もしかしたらドラマを見て『吃音は治るから大丈夫』と思う人がいるかもしれません。私はたぶんずっと治らないから、うまい具合に吃音と付き合っていくしかありません。そういう私みたいな人がいることを知ってほしいと思います。特に、教育現場の方にドラマを見てほしいです。吃音は関わり方次第で悪化もするし、軽くもなるので」と願いを込めた。