昔は戦争、今はスポーツ…ガッツ氏が感じる“ボクシングの性質”の変化
2016年06月17日 11:30
芸能
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ガッツの気遣いに触れた後、本題を切り出した。世紀の一戦の思い出について聞くと「あれは、俺が東洋太平洋級の王者の時だったな…」。
だが、いきなりひと言はさまなくてはいけない事態になった。
「恐れ入りますが、ガッツさん。手元の資料では、世界王者から陥落して1カ月後では?」。
間違いを指摘するのは申し訳ないと思いながら、事実を確かめる必要もあって言ってみると、ガッツは「あれ、そうだっけ。ガハハ」と豪快に笑い飛ばした。
ガッツ節の軟らかい“ジャブ”を浴びつつ、試合の感想を問うと「あの試合から得るものはなかった」と不意に鋭い“ストレート”が飛んできた。現役時代の必殺ワンツーパンチ“幻の右”を想起させる会話の緩急だ。
得るものがなかった理由を尋ねてみると「プロレスとボクシングは水と油だから」。プロレスは組んで技を繰り出し、ボクシングは相手との間合いを計って打ち合う。戦前からかみ合わないことを想定していたという。
世界中で約14億人が見届けたとされる世紀の一戦は当時“凡戦”と評されたが「試合が実現しただけで価値があった」とも。「水と油は上手に調理すると凄くおいしくなるでしょ。まさに両雄並び立つ。野球で言えば王さんと長嶋さんが一緒にいると絵になるように、スターは動いているだけで十分絵になった」と評価している。
カリスマの存在感は見る人の心を打つ。今後、アリ氏のようなボクサーは誕生するのだろうか。ガッツ氏はボクシングの性質が変わったとみる。
「昔のボクシングはやるかやられるか。戦争と同じ。けれども、いまはスポーツ。身体にダメージを残さないことが優先され、どちらかが優勢と判断されたらレフェリーがすぐ試合を止める傾向にある。善し悪しはあると思うが、ファンは本物、偽物をすぐに見抜く。ボクシング出身としてそこは危惧している」。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」ことのできるカリスマが生まれるのは難しい環境。そんな中でも、ガッツの熱い口調からスター再来を願うストレートが放たれたような気がした。(記者コラム)