八名信夫 健さん直伝、悪役の心得「殺されに行く顔をするな」
2016年07月17日 10:00
芸能
![八名信夫 健さん直伝、悪役の心得「殺されに行く顔をするな」](/entertainment/news/2016/07/17/jpeg/G20160717012981030_view.jpg)
小学生の時から野球を始め、1メートル82と体格にも恵まれ、1956年に東映フライヤーズ(現日本ハム)に入団。58年、登板中に腰を骨折し、当時、球団オーナーだった東映の大川博社長から俳優転身を命じられた。
演じるのは顔も映らない通行人ばかり。高給だった野球選手とは一転し、ギャラは1日500円の日々が続き「悪役は主役と斬り合ったり撃ち合ったりするから顔が映る。“役”とつけば3000円くらいもらえるし、狙うならこれだ」と志望。監督に「大きいから倒れると迫力がある」と売り込み、野球で培った俊敏さも立ち回りで重宝がられ、悪役としての起用が増えた。
東映の看板スターだった健さん主演の「昭和残侠伝」「網走番外地」シリーズにも出演。「健さんからは“ギラギラしとけ。腹いっぱいの顔して撮影所の中を歩くな”と教えられた。“最初から殺されに行く顔をするな”とも言われました」。この教えが、主役と対峙(たいじ)する迫力を生み出した。
著名人が健さんの思い出を語るドキュメンタリー映画「健さん」(8月20日公開)では、健さんが現場で入れるコーヒーのまずさを暴露。「どろっとしたコーヒーでまずいんだ。健さんは見てないフリをして見ているから飲み干すと、“もう一杯”って勧められて」と苦笑い。「騒がしいヤツに睡眠薬と下剤を少し混ぜたコーヒーを知らん顔で飲ませたり。わんぱくなところもあったね」と懐かしそうに語った。
一方、極寒のロケでも火に当たらない姿を目の当たりにし「“スタッフは凍える思いでやってる”と吹雪の中で足踏みしてた。“どんなことがあっても辛抱せえ”と教えられた」と振り返る。「結婚寸前の頃に(江利)チエミちゃんのところまで車で送る途中、“そこの修理場に寄れ”と言われて、店員に“この車が来たら全部俺のツケでやってくれ”と言ってくれた。思いやりがあって、中身もスターでした」としみじみと語った。
◆八名 信夫(やな・のぶお)1935年(昭10)8月19日、岡山市生まれの80歳。明大を中退し、東映フライヤーズに入団。プロ野球3年間の通算成績は15試合に登板し、0勝1敗。防御率3.86。主な出演作は、映画は「昭和残侠伝」「網走番外地」「不良番長」「仁義なき戦い」シリーズ、ドラマはNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」、連続テレビ小説「純情きらり」など。14年にソフトバンク対日本ハム戦で始球式に登板した。