「権兵衛」にニコニコ 橋之助 思わず神輿を担ぎたくなる優しさ
2016年09月11日 11:00
芸能
先日、テレビの収録で京都へ行った際には、伏見稲荷神社で「橋之助」の名前を書いて、鳥居を奉納した。「37年もお世話になった名前ですから」と手を合わせて、丁寧に拝み「これからもお守りください」とつぶやいた。一門代々の名前を名乗ることは歌舞伎役者にとって大変な名誉。生涯で名前が3つ4つ替わる役者もいる中、これほど前の名前に感謝を示す役者も珍しい。
襲名披露公演では3人息子も同時襲名するが、歌舞伎の所作を教える時は厳しく指導をしても、普段の生活態度や歌舞伎人としての心得などを厳しく律するのは妻の三田寛子(50)。妻がひと通り叱った後に満を持してたしなめる「どっちかというと、おいしい役どころ」と笑顔を見せる。
きっと生まれながら優しい心持ちなのだろう。そんな橋之助だからこそ、周囲に人が集まってくる。先月28日の“橋之助最後の舞台”では終演後、若手から大ベテランまで全出演者が楽屋に残って橋之助にねぎらいの言葉をかけた。
中村勘三郎さん、坂東三津五郎さんの2大スターが早世し、周囲からけん引役として期待される橋之助だが、ぐいぐい引っ張るタイプ感じではなく、どちらかと言うと思わず神輿(みこし)を担ぎたくなるこの世界では珍しいタイプ。八代目中村芝翫が刻む新しい歌舞伎界の歴史に期待したい。