「真田丸」大野治長好演の今井朋彦 映像の魅力再発見 大河との因縁
2016年12月10日 10:00
芸能
今回の大野治長役については「正直、秀吉(小日向文世)が亡くなった後にいいポジションにいたというぐらいしか知りませんでした」というが、演技プランについては「付き合いの長い三谷さんのことですから、僕のことを何となくイメージしながら書いてくださるので、それを頼りにやっていこうという感じで現場に入りました」と三谷氏に厚い信頼を寄せる。
真田幸村(堺雅人)ら牢人衆と、茶々(竹内結子)ら豊臣家の有力者との間で、意見調整に苦悩。一般的には好戦派に対する保守派とも言われるが、今回は幸村と協力。「もし幸村と出会っていなければ、一般的に言われるような『上がこう言っているんだから、無難な線でいきましょう』で終わった人かもしれません。ただ、自分に牢人衆を束ねる才覚はない。幸村にはある。幸村の才能を使おうという“見極めの才覚”はあったのかもしれません」と分析した。
当初は映像作品への出演に戸惑いもあった。1話だけのゲスト出演など「短い期間で収録が終わると、消化不良といいますか、自分がその作品に深くコミットした感じがなかなか得られないまま、その現場からは離れてしまう」。しかし大河ドラマの今作は、毎週月曜日にその週に撮影する分のリハーサルを行うところから始まり「本当に長い時間を経験させていただいて、ようやく映像のおもしろさが分かってきたといいますか。もちろん、今までも映像がおもしろくなかったわけじゃないんですが、自分が関わらない徳川方のリハーサルとか見ていると、こんなふうにやっているんだと、おもしろさもあるし、時間を経ることで現場の空気に自分が深く入れていく感覚がようやく分かってきました」と映像の魅力を再発見した。
「三谷さんが僕に初めて声を掛けてくださったのも、全く面識のない時に僕の舞台を見てくださった時でした。今回も『作品に深く関われた』という初めての感覚で自分がドラマに参加しているところを見てくださった方から『次、これに挑戦してみない?』と声を掛けていただけたら。(活躍の幅が)また広がっていくことがあれば、うれしいと思います」と「真田丸」が新たな転機になることに期待を込めた。
自身のキャリアと大河ドラマとの間には切っても切り離せない縁がある。5歳の時の「新・平家物語」(1972年)から見ており「勝海舟」(74年)には文学座代表の江守徹(72)が出演。「うちの母が江守さんのファンで『(芝居が)上手だね』と言っていた記憶があります。その後『元禄太平記』(75年)で大石内蔵助役をなさっていて『あ、これが母が言っていた人だ』と。その頃から江守さんのイメージがあって、いい俳優さんだと刷り込まれたんです」
中学3年の時、母親に連れられて自宅の近所で上演された江守主演の舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」を観劇。生のステージは今井の心を強く打った。
大学に入り、演劇研究会に入部。「なぜ演劇を選んだのかと振り返ると、母がつくった環境もちょっと影響しているのかなと思いました。どこか劇団の養成所の試験を受けようと思った時も、知っている人と言えば江守徹さん。『あの(中学3年の)時に見た文学座で試験があるな』と受けたんです」。当時の体験が現在のキャリアにつながった瞬間だった。「大河ドラマとは因縁浅からぬ…本当にそう思います」と、しみじみ振り返った。