時代劇「鬼平犯科帳」ファイナル ラストに感動が待っていた
2016年12月22日 08:30
芸能
原作は1967〜1989年、「オール讀物」に連載された全135作。吉右衛門の平蔵は、松本幸四郎(のちの白鸚)、萬屋錦之介、丹波哲郎(共に故人)に続いて4代目となる。白鸚は吉右衛門の実父。
原作で語られる長谷川平蔵の容姿は「小肥りのおだやかな顔貌で、笑うと右の頬にふかい笑くぼがうまれたという」。これは作者が白鸚の容姿をモデルにしたと言われている。
長谷川平蔵は実在の人物で、火付盗賊改方の長官に就任したのが45歳。吉右衛門も同じ45歳でこの役を演じるようになった。73歳の現在まで28年間。舞台では重い衣装を身につけ、激しい動きを必要とされる演技もこなす歌舞伎俳優である。その体力は、常人が想像できるものではない。だがファイナルの撮影が終了したあとの会見で「鬼平は不言実行。密偵を使いながらもまず自分で動く。行動力、体力、今回がギリギリ動けるところではないかと」と話している。
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の両津勘吉、「ゴルゴ13」のデューク東郷など長期連載マンガの主人公は、作品の中で年をとらない。だが生身の人間が演じる時代劇は違う。
録画した「THE FINAL」をやっと観る時間ができた。
ラスト近くに感動的なシーンが待っていた。
再放送を観る方にとってはネタバレになる。
事件が解決し、後ろ盾である大名・京極備前守(橋爪功)から褒美で酒を与えられた平蔵は、軍鶏鍋屋「五鉄」に、自らの手足となって働いてくれた密偵たちを呼ぶ。おまさ(梶芽衣子)、大滝の五郎蔵(綿引勝彦)、伊三次(三浦浩一)、そして五鉄の亭主、三次郎(藤巻潤)、店を手伝うおとき(江戸家まねき猫)に、もらった酒をふるまう。酒を各人につぎわけ、
平蔵「みんなが頼りだ。これからもよろしく頼むぜ」
一口飲んで五郎蔵「腹にしみわたるぜ」
おまさ「長谷川様、これからもどうか末永く」
平蔵「おう」
これから先はないのだ。ファイナルである。これは演技に借りた別れの酒宴。演者たちの目に涙が光っていたとは、うがった見方か。
本来、この場にいるはずの密偵、相模の彦十(3代目江戸家猫八)、粂八(蟹江敬三)はすでに故人。28年の歳月を感じさせる感動的なシーンだった。
「鬼平犯科帳」は来年1月、テレビ東京、時代劇チャンネルでアニメとして復活するという。
だがファンとしては時代劇での復活を望む。(専門委員)
◎こんにゃくの炒り煮 原作の「逃げた妻」から。茶屋に入り、老婆に酒を頼む平蔵。
【老婆がぶつ切りにした蒟蒻(こんにゃく)の煮たのを小鉢に入れ、酒と共に運んで来た。
唐辛子を振りかけた、この蒟蒻がなかなかの味で、
「うまい」
おもわず平蔵が口に出し、竈(かまど)の傍にいる老婆へうなずいて見せると、老婆は、さもうれしげに笑った。皺は深いが、いかにも人の善さそうな老婆だ。】
我流にアレンジを加える。
(1)コンニャクは一口大に手でちぎる。
(2)フライパンでから煎り。ゴマ油を加え炒める。
(3)しょうゆに酒、みりん少々を加え、コンニャクに絡ませるようにして炒め煮にする。
(4)水分が飛んだらかつお節をまぶしてできあがり。
※唐辛子は好みで。
◆笠原 然朗(かさはら・ぜんろう)1963年、東京都生まれ。身長1メートル78、体重92キロ。趣味は食べ歩きと料理。