「爆笑ヒット」半世紀続いたワケ 根幹変えず進化 ナイナイMC転機の1つ
2016年12月31日 09:00
芸能
賞レースのような「生きるか死ぬか」の雰囲気とは違い、いかに楽しく賑々しい正月らしい空気を作れるかが番組作りのカギの1つ。藪木氏は“気持ちの演出”を重視し、毎年「今年も笑いのお年玉ありがとうございます」と出演者を出迎える。「感謝の思いはきちんと言葉としてお伝えして、芸人さんには『任せとけ!』というような感じで乗ってネタをやっていただきたい。スタジオの空気を最善にして、それが少しでもお茶の間に伝わるようにしたいと思っています。ネタをやる芸人さんも、MCも、スタジオのお客さんも、中継の街も、どこが映っても、お正月の空気があふれているものを作らないと」と、こだわりを明かす。
その空気が50年間続いた理由の1つと分析。「お正月の空気とマッチしていたからじゃないでしょうか。作る側と受け取る側の空気と合っていたからこそ、みんなの原風景になっているというか。例えば、お正月の一家団らんの絵を描きましょうと言われた時、だいたい、テレビにはネタ番組が映っている感じがするじゃないですか。50年も続けば、ちょっとした文化。そこまで行けるぐらい、毎年いい空気を送り届けられてきたんじゃないでしょうか。だからこそ『お正月といえば』の風物詩になれたんだと思います」
さらに「退屈なマンネリズムじゃなく、素敵なマンネリズムになるまで粘れたんじゃないでしょうか」と見解。今回の回顧企画のため、過去のVTRを見直し「今じゃ絶対無理ですが、芸能人の家をヘリ中継し『ここ、誰それさんの家です』と紹介したこともありました。今見ると危なっかしいことをしていましたが、『じゃ次はネタを見ていただきましょう』と基本に戻れる場所があったので、ヘリ中継などは攻められたんだと思います。番組の枝葉は攻めた企画で進化しながら、お正月の空気という根幹は変えずに継続してきた。安定した中で、毎年マイナーチェンジを続けてきた。これが半世紀続いた理由じゃないでしょうか」と付け加えた。
藪木氏が「爆笑ヒット―」に携わってからの転機の1つが09年、お笑いコンビ「ナインティナイン」のMC就任(08年は第3部のみ)。来年、9年連続の大役を務める。90年以降は西川きよし(70)桂文枝(73)笑福亭鶴瓶(65)明石家さんま(61)ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、爆笑問題らが正月の顔を担ってきた。
「大きな若返りになりました。『ENGEIグランドスラム』『THE MANZAI プレミアムマスターズ』でも司会をお願いしていますが、ナインティナインさんご本人たちは非常に芸人さんを敬愛していて。出演者の方々を『漫才師さん』と敬意を込めて呼び『ネタをやる人たちは本当にすごい』とリスペクト。その上で最高の笑顔でネタを受け止めるんです。ネタ番組の一番のファンとして、先頭を走っている感じです。いわゆる師匠と呼ばれる人たちに対しては、後輩として先輩を敬いながら、世代の差を楽しむというか。普段、バラエティー番組で共演しているような人たちとは横のつながりで笑いを作ったり。番組として、横に広がりが出ましたね。そんなに司会司会していないところがナインティナインさんのいいところだと思います」と評価した。
「爆笑ヒット―」の今後については「僕が言うのはおこがましいと思います。先の人が決めること」と前置きしながら「方向性は守ってほしいと思う一方、変わっていくべきだという思いもあります。ただ、僕が携わる間は、攻めるところは攻め、守るところは守り、視聴者の皆さん、出演者の皆さん、みんなが笑顔になれる、笑いだけの番組を作ることができる幸せを感じながら、やっていきたいと思います」と見据えた。