なにをいまさら アパホテル騒動と日本の国益
2017年02月10日 08:15
芸能
書籍に書かれている内容や、著者でもあるアパグループ代表の元谷外志雄氏の歴史認識はさておいて、書籍を撤去しないという姿勢は、経営上のリスクを計算に入れた上での方針であろうし、ある種、潔さを感じる。
私はアパホテルを何度か利用したことがある。部屋は清潔だし、スタッフの対応も良かった。自動チェックインシステムはなじまないが。
狭いユニットバスのバスタブを楕円にして、カーテンレールを曲線にして設置しているのにも工夫を感じた。使い勝手も良いホテルなのである。
今回の一連の騒動。同ホテルを利用した米国人の“告発”動画が発端という。なにをいまさら…だろう。
以前から宿泊している人なら分かる。
部屋に置かれている冊子「アップルタウン」の中で、元谷氏は「藤誠志」のペンネームでコラムを連載。自らの歴史認識についても触れている。
さらに「真の近現代史観」と題した同グループ主催の懸賞論文を募集。08年、第1回の最優秀藤誠志賞は元航空幕僚長の田母神俊雄氏。論文のタイトルは「日本は侵略国家であったのか」。
元谷氏は保守の論客であり、「右翼」という評価も、いまさらなのだ。従ってこの期に及んで…の中国側の対応も、裏に何かあるのではと勘ぐってしまうのだ。元谷氏は安倍晋三首相の後援会「晋友会」を通じて首相とも交流があるという。深読みすれば中国側の大人げない“いちゃもん”もそのへんに理由があるのか?と考えてしまう。
俳優の袴田吉彦は、アパファンで、不倫相手との密会でグループのホテルを利用していたという。一方で、国際機関に勤めている私の友人は、元谷氏の歴史認識が受け入れられないという理由からアパグループを利用しない。良い意味でも、悪い意味でも利用者を選ぶホテルなのだろう。
観光庁がこのほど発表した16年の訪日外国人数は2403万9000人。消費総額は前年比7・8%増の3兆7476億円。このうち1位の中国は1兆4754億円。全体の34・9%。台湾の5245億円、韓国の3578億円と続く。
消費活動の中で中核となる生産年齢(15〜64歳)人口の減少により、近年、内需が伸び悩んでいる。そんな中、いくら賃上げをし、働き方を変えたところで、外国人旅行客がもたらす3兆円超の内需が拡大することは今後、絶対にない。だからこその外国人観光客頼みだ。超高齢化社会を迎える日本の経済基盤を下支えするためにも日本を訪れてバンバンお金を使ってもらわなくてはならない。そして外国人にお金を払わせる魅力が日本にはあると思う。
安倍首相は、1月20日に行われた施政方針演説で、訪日外国人が2400万人を超えたことについて触れ、「あらゆる政策を総動員して、次なる4000万人の高みを目指し、観光立国を推し進めて参ります」と述べている。
中国、台湾、韓国は日本にとって大お得意様だ。政府も主導しているではないか。隣人であるこれらの国から来る観光客をもてなすことは、国益にも沿う。
読んでいないから内容はわからない。ただホテルの部屋に置かれた1冊の書籍があらゆる問題を提起をしたことは確かだ。(専門委員)
◎APA中華風蒸し
語呂合わせだ。「A」はスペイン語の「アホ(ajo)」。つまりニンニクのこと。「P」は英語で「ペッパー」のコショウ。最後の「A」は日本語で「アサリ」。国際的ホテルに敬意を表して、味は中国風に。
(1)砂抜きしたアサリをよく洗う。
(2)フライパンにゴマ油をしいて、みじん切りのニンニクを加え、軽く炒めたらアサリと紹興酒を加える。
(3)コショウを振りかけ、味を見ながらオイスターソースで味を付ける。
(4)フライパンにふたをしてアサリのからが開いたら、フライパンを振って全体に味をなじませてできあがり。
◆笠原 然朗(かさはら・ぜんろう)1963年、東京都生まれ。身長1メートル78、体重92キロ。趣味は食べ歩きと料理。