「貴族探偵」謎解き2話分の労力 黒岩勉氏「歯応えのある作品」に挑戦
2017年05月07日 17:00
芸能
![「貴族探偵」謎解き2話分の労力 黒岩勉氏「歯応えのある作品」に挑戦](/entertainment/news/2017/05/07/jpeg/20170507s00041000256000p_view.jpg)
貴族探偵の代わりに推理を行うのは執事・山本(松重豊)メイド・田中(中山美穂)運転手・佐藤(滝藤賢一)の3人。貴族探偵から「女探偵さん」と呼ばれる高徳愛香(武井咲)は同じ事件に出くわし、推理対決を繰り広げる。
ドラマの基になった原作のエピソードを見ると、第1話が「貴族探偵対女探偵」第1章「白きを見れば」、第2話が「貴族探偵」第4章「加速度円舞曲」、第3話が「貴族探偵」第2章「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。第2話、第3話の原作には女探偵が登場しないため、女探偵の推理を新たにオリジナルで発想し、物語全体を再構築しなければならない。
例えば、第3話。女探偵は、宇和島逸子(岩佐真悠子)殺害の犯人を夫の政人(高橋努)だと推理。犯行動機は妻からDV(ドメスティックバイオレンス)被害を受けていたためとした。ドラマオリジナルの肉付けで、政人の職業設定も商社マン(原作)→ボクサー(ドラマ)に変更した。
「ストロベリーナイト」「ようこそ、わが家へ」などでも知られる黒岩氏は「ミステリーにはトリックや動機に普遍的なパターンがあると思いますが、なるべく事件の背景に時事ネタを入れて新しく見せていこうと心掛けています」と腐心。「3話の女探偵の推理の元ネタになったのは『妻からDV被害を受け、悩みを誰にも相談できない夫が増えている』という記事でした。それを読んだ時、夫がプロボクサーだったら余計誰にも言えないだろうな、とか、奥さんも暴力を振るっていることが夫の試合の時にバレないように裸になる上半身ではなくシューズで隠れる足とかを狙うだろうな、とか、いろいろと想像して膨らませていきました」と明かす。
しかし、夫を犯人とした女探偵の推理は、貴族探偵の召使いたちによって覆される。
「原作が素晴らしい本格ミステリーでトリックが精緻に構築されているので、まず、それをテレビ的にどう分かりやすく伝えるかが一番大事かなと考えています。ドラマオリジナルで女探偵の推理を新たに構築する場合は、原作にある正解推理の他に、どんなことが考えられるか、自分なりに謎解きをしてみて、浮かんだ新たな推理をより正解らしく見せるために、現場の状況や関係者の証言などを肉付けしていくというやり方で作っています」
1話の中で謎解きを2回しなければならないが、その分、チャレンジのし甲斐もある。
「1つの事件に2つの推理が必要になるので、1話考えるのに2話分の労力がかかります。とても歯応えのある作品で、時間も手間もかかる。でも原作の『貴族探偵対女探偵』を読んだ時、女探偵が先に披露した推理のどこに穴があったのだろう?貴族探偵がどのようにひっくり返すのだろう?と考えるのが次第に楽しくなってきて、このおもしろさを、ぜひドラマでもやってみたいと感じました。実現すれば、今までにないミステリードラマになるはずだと」と革新的な作品を生み出すべく意欲。
今後についても「もちろん毎回毎回、ただ女探偵が推理を間違えるだけだとさすがに飽きてくるので、その間違い推理自体がとてもユニークだったり、たとえ間違っていても人を救うことになったり、ある意味正解だったり、女探偵側の推理のパターンもいろいろ変わっていくので、その辺も楽しんでいただけたらと思います」とアピール。「そして、いつか女探偵は真相にたどり着き、貴族探偵に勝つことができるのか?その時、貴族は何を語るのか?2人の勝負の行方がドラマの大きな軸になっていますので、女探偵を応援しながら最後まで見てもらえれば、うれしいです」と呼び掛けている。
<社会風刺も>第3話は、円満な夫婦仲を示すため、政人が既に殺害された逸子の生首にキスをする姿を自撮りしたと女探偵が推理。黒岩氏は「SNSにリア充をアピールする人が増えているので、妻からDVを受けている夫が、妻の生首にキスした写真をアップして仲の良い夫婦を偽装していたらゾッとするな、と考えました。過剰なリア充アピール社会の行く着く先に起きた事件、みたいに、ちょっとした風刺の意味合いも込めています」と意図を説明した。