“一寸法師”前野朋哉 意外な一面と俳優になった理由「それも運なのかなぁと」
2017年05月13日 18:05
芸能
5月20日公開の「トモシビ 銚子電鉄6.4kmの軌跡」では、人のいい撮り鉄青年・熊神守役を好演した。「役柄はほぼ当て書きのようなもの。僕自身も無理に作り込むことなく演じることができた。相手を好き過ぎるあまりに婦女暴行の容疑をかけられるという、ほぼ僕じゃないか!?というキャラクター」と冗談交じりに話す。俳優として今、旬を迎えている。だが“本籍”は映画監督だ。
大阪芸術大学在学中は学生映画監督として活躍。監督・脚本・主演を務めた自主映画「脚の生えたおたまじゃくし」(2009)は、出品したゆうばり国際ファンタスティック映画祭の審査員長だった香港ノワールの巨匠ジョニー・トー監督から激賞され、その後の大阪アジアン映画祭でも同監督はトークショーで「彼は才能のある映画監督だ」と賛辞を惜しまなかった。それでも現実は厳しく、映画監督だけで食べていくのは難しい。
折しも俳優の道を勧めてくれたのが、映画「舟を編む」(2013)「バンクーバーの朝日」(2014)で知られる石井裕也監督。学生時代に石井監督の卒業制作に照明助手として参加、それが前野にとって初めての映画の現場で、石井監督は映画作りの面白さを教えてくれた恩人でもある。「石井監督もそうだし、大学時代の同級生のカメラマンにも同時期に“お前は俳優を絶対にやった方がいい”と同じことを言われた。自主映画時代は俳優を兼任することもあったが、自分としてはその言葉に実感がなかった。でも俳優として最初に受けたオーディションに受かったりして、それも運なのかなぁと」。
ポジションがどうあれ、根本にあるのは“映画愛”。「監督の仕事がゼロで俳優業ばかりになったとしても、死ぬまで映画に関わっていられればいい。俳優として現場でいろいろな監督の演出を受けることによって監督としての勉強にもなる。自分の映画は撮れる時に撮ればいいという気持ちにシフトできている」。
臨機応変に、今はこれという道を進む。現在は個性派俳優として精進中。現在、映画監督として動かしている企画もある。「ジョニー・トー監督からは、俳優として褒められたことは一度もない」と苦笑しながらも、企画が実現すれば監督だけでなく、主演も務める心づもりはできている。俳優としてひと足先に花開いた才能だが、もう一輪の花はまだつぼみのまま。焦る必要はない。精進を続ける人にチャンスは必ず回ってくる。(石井隼人)