みなさんもローザに会いに来ませんか
2017年05月18日 11:00
芸能
敗戦国にこんな強い日本人女性がいた。その事実を戦勝国アメリカの人たちはどう思うだろうか。一緒に舞台を立ち上げた、今は亡き杉山さんと夢見たニューヨーク公演も一昨年4月、実現することができた。その時、予期せぬ出来事が起きた。終演後、1人の少女から素敵な言葉をプレゼントされたのだ。「どんな苦しいことにも負けずに生き抜いたローザは、私のヒーローです」。その大きな瞳からは止めどなく涙があふれていた。「そうか、若い人たちはローザをこんな風に見てくれるんだ」。この世にあってはならない殺戮や憎しみ。いつも平和を願って演じるローザは、実は客席1人1人へさまざまなメッセージを伝えていたのだ。
大切なことを米国の少女から教えられた。五大さんは、今、小中高校や大学へ出向き、本や映像などを使ってローザの生き様を伝え、学生たちと反戦、平和を語り合う活動をしている。芝居を見てもらった後に、再度、感想を述べ合ったり、紛争が絶えない世界情勢のことなどを討論する。五大さんのもとには、「これから1日1日を大切に生きて行きたい」「何をすればよいかと悩んでいた自分が恥ずかしい」など、観劇した若者からいろいろな声が届けられている。
それにしても、なぜローザは年老いても化粧をして街角に立っていたのだろうか。演じている五大さん本人にも、それは分からないという。「その答えを求めてこれからもずっと舞台に立ち続けたい」。これもひとつの運命の出会いなのか。ローザの姿を追い求めることが、いつしか五大さん自身の自分探しの旅になった。
「横浜ローザ」は5月26日から30日まで、横浜赤レンガ倉庫1号館ホールで上演される。 (専門委員)
◆川田 一美津(かわだ・かずみつ)立大卒、日大大学院修士課程修了。1986年入社。歌舞伎俳優中村勘三郎さんの「十八代勘三郎」(小学館刊)の企画構成を手がけた。「平成の水戸黄門」こと元衆院副議長、通産大臣の渡部恒三氏の「耳障りなことを言う勇気」(青志社刊)をプロデュース。現在は、本紙社会面の「美輪の色メガネ」(毎月第1週目土曜日)を担当。美輪明宏の取材はすでに10年以上続いている。