バカリズム“編集なしロケ番組”の舞台裏 挑戦的姿勢に隠された入念な“段取り”
2017年05月29日 12:30
芸能
午後1時30分。小雨が降る中でリハーサル撮影がスタート。撮影は映像のブレを防ぐためステディカメラと呼ばれる特殊カメラによって行われ、カメラマンは機材が取り付けられたベストを着用して街を歩く。このステディカメラ、映画の撮影などで使用されることが多く、ロケ番組で使われることは非常に珍しい。重さは約20キロあり、これを担ぎながら30分間歩くとカメラマンの腰には相当の負担がかかるそうだ。
リハーサルでは今回のロケで取り上げる名店、おすすめスポットなど計15カ所を本番同様に撮影。テレビカメラを前に緊張する商店街の人々を、「間違っても大丈夫ですよ」「最高の笑顔ありがとうございます!」と撮影クルーがリラックスさせていた。また、途中で登場する小学校低学年ぐらいの男の子には「心の中で1、2と数えてからセリフを言おうか」とスタッフが丁寧に“演技指導”。第1回「西荻窪編」(4月3日)の放送でバカリズムが「劇団みたい」とVTRの感想を語っていたが、まさにその言葉通りの光景だった。
午後2時30分にリハーサル撮影が終了。スタッフ全員が集まって本番前の打ち合わせが行われる中、ストップウオッチを手にしたディレクターがVTRの“尺”について議論を交わしていた。「人によって話すスピードも違うので、リハーサルの後に急きょセリフを削ることもあります。やはり、皆さんカメラが来ると普段とは違いますからね」と語るのは番組プロデューサーで、テレビ東京制作局の荻野和人氏。「若いディレクターが担当した回では尺の計算を失敗したんです。30分に収めるために早送りを多用したのですが、あの回は我々も勉強になりました」と“失敗談”を明かす。
打ち合わせの結果、少し尺がオーバーしているという判断が下された。本番直前にもかかわらず、あるシーンがカットされることに。収録後に編集ができないため、撮影現場で編集作業が行われた形だ。
撮影日までの準備も入念。あるスタッフによると、少なくとも10回は下見のために商店街を訪れているという。「撮影中に何か起こったときにフォローしてくれるタレントさんもいませんし、少ない人数で60〜70人の出演者をまとめないといけない。スタッフ一人一人の役割がすごく大きいですね」と苦労を語る。
打ち合わせを終え、午後3時15分に本番撮影がスタート…といきたいところだったが、雨足が強くなったためスタート地点の商店街入り口でしばらく待機することに。撮影が悪天候に見舞われたのは今回が初めてなのだとか。
ロケ中止という最悪の展開も脳裏をよぎったが、幸いにも雨は弱まり、当初の予定からおよそ15分遅れた午後3時30分すぎに本番撮影がスタート。入念な“段取り”の甲斐あって大きなハプニングもなくこの日の撮影は終了し、荻野氏は「満足です。ハプニングが起こることも番組の味ですけど、味が濃すぎてもいけないので」と“撮れ高”に充実の表情を浮かべていた。
30分長回しの映像をほぼノーカット放送。一見いい加減にも思える斬新な試みの裏側には、番組スタッフの入念な下準備が隠されていた。