芸能界の薬物事件を憂う
2017年06月12日 10:30
芸能
過去に起きた二世タレントの不祥事を今さら列挙するつもりはない。ただひとつだけ、この種の事件が起きるたび思い出すことがある。もう20年以上も前、私が芸能取材を始めたばかりの頃だ。かつて美人女優として名をはせ、その当時は優しい母親役で活躍していた三ツ矢歌子さんの息子が薬物で捕まった時のことだ。一報を受けて、先輩記者と都内の自宅を直撃取材。インターホン越しに三ツ矢さんの話を聞くことが出来た。
「申し訳ございません」を何度も繰り返した後、突然、泣き崩れる様子がインターホンの向こう側から伝わってきた。取材後、帰りのタクシーの中で先輩が「何か複雑だよね。自分がしたことじゃないのに。やっぱり有名人はつらいよな」とぽつり。私も心のどこかに何かひっかかるものを感じていた。翌日、三ツ矢さんは正式に謝罪会見を開き、その後、ほとんどドラマでその姿を見ることはなくなってしまった。
軽はずみな行動により失うものはあまりにも大きい。それは本人や親だけでは済まない。俳優であれば出演していた映画、ドラマなどがそのままお蔵入りしてしまうこともある。多くの共演者やスタッフに取り返しのつかない迷惑をかける。目先の快楽に飛びつく前に、法律を犯すこと、薬物を使用したらどうなるか、もう一度立ち止まって冷静に考えてみてほしい。何よりも支えてくれたファンのことを思えば、絶対に人の道を踏み外すことなど出来ないはずだから。 (専門委員)
◆川田 一美津(かわだ・かずみつ)立大卒、日大大学院修士課程修了。1986年入社。歌舞伎俳優中村勘三郎さんの「十八代勘三郎」(小学館刊)の企画構成を手がけた。「平成の水戸黄門」こと元衆院副議長、通産大臣の渡部恒三氏の「耳障りなことを言う勇気」(青志社刊)をプロデュース。現在は、本紙社会面の「美輪の色メガネ」(毎月第1週目土曜日)を担当。美輪明宏の取材はすでに10年以上続いている。