松重豊「孤独のグルメ」は「宝物」マンネリも努力必要 第6期「食欲出た」
2017年06月30日 10:00
芸能
最終回は「品川区五反田の揚げトウモロコシと牛ご飯」。レギュラーシーズンだけで72食を完食。クランクアップに際し、松重は「これだけの数を放送に費やしても、まだ店がある。きょうの店も、なかなか入りにくい店だと思うんですが、よく五反田のスナック街に、こんな名店があったなと。スタッフが本当に血眼になって探してくれているおかげで、何とかシーズン6も乗り越えたと思います」と感謝。「この5年間、スタッフとは事あるごとに顔を突き合わせているので、この作品に関しては、撮影が終わって寂しいというよりも『じゃあ、またね』という気持ちの方が大きいですね」と心境を明かした。
4月に行われたシリーズ初の制作発表において、主演自ら番組を「オワコン」「マンネリ」と評し、反響を呼んだ。シーズン1の初回(江東区門前仲町のやきとりと焼きめし)を見直しても、街歩き→店探し→食事というフォーマットは既に完成。松重の言う通り、パターン化されているが「形を変えずに居続けるというのは、意外と難しい。その方が凄まじい努力が必要ですし、そこにつぎ込むエネルギーも前のシリーズよりも確実に上じゃないとならないという意識もあります。だから『いや〜、相変わらずだね〜。マンネリで』と言われるのは、僕らにとっては最高の褒め言葉になると思うんです。オワコンと言われても仕方がない作品だと思うんですが、それを中毒性を持った内容にし『つい見ちゃった』とさせるには、どういう仕掛けが必要なのか。スタッフと全員で考えているつもりです」と胸を張った。
最も大切にしているのは、リアリティー。例えば、スタッフが昼食の間も松重は我慢し、空腹の状態で1口目を食べる。「これがフィクションになっちゃうと、やっぱり、美味しそうな演技になる。役者が何かを語り始めたら、それは、どんどん陳腐なものになっていきます。視聴者の皆さんには『この人は本当におなかが空いているんだろうな』『この料理は本当に美味しいんだろうな』とリアルに感じていただきたい。もちろん、本当に美味しい料理が出てくるんですが、それをことさら何か誇張して表現するということは、敢えてしないと約束の下に、この作品は始まっています。そこのリアリティーだけは一貫して濁りがないようにしているつもりです。『リアルに感じる』ということは『共感する』ということに近いと思います」。これが人気の一因なのかもしれない。
ちなみに食べる料理の順番は、脚本の田口佳宏氏と児玉頼子氏が細かく書いており、松重は「1口目に何を食べ、何を残し、何でフィニッシュに行くか。きちんと計算された上で台本に反映されています」と明かした。食事シーンのモノローグも、作品を支える重要なファクター。「思ったより熱いよねとか、硬いよねとか、甘いよねとか、食べた瞬間のインパクトが強ければ、そこを出発点としたモノローグに変えていただきます。きょうみたいに田口さんが撮影現場にいらっしゃることもあるので、その場でモノローグを書いていただいています」というこだわりぶりだ。
今年1月期に話題を集めたテレビ東京「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」に名を連ねた通り、名脇役として活躍してきた松重の連続ドラマ初主演作。自身にとっての「孤独のグルメ」の位置付けを聞くと「こんなに長い間、同じ役を演じることは、これから先もあるとは思えない。芝居だけやっていたら気付かなかったものが、いろいろ発見できましたし、そういう意味で、本当に僕の貴重な宝物になっているというのは間違いないと思います」と愛着を示し「新発見?今年、54歳になったんですが、また食欲が出てきたんですよね。シーズン6は追加注文した料理の数も多くて。きょうも、まだ食べられると思っているんです。また次の成長期に入ったのかな。また背が伸びたらビックリするなと思っているんですけどね」と笑った。
番組の今後については「僕の口から、どうこう言えるものじゃないということだけは重々承知しています」と断りながら「ただ、飲み会の席ではスタッフと『ここ行きたいね』『あそこ行きたいね』という話は酒のつまみでしていますので、そういう(さらなる長寿シリーズ化の)夢は、みんな持っていると思います」。ひとまず30日が見納め。松重の食べっぷりを堪能し、シーズン7を待ちたい。