吉岡里帆 実は“気にしい”なんです 憧れは気ままでマイペースな猫
2017年08月08日 09:10
芸能
「ネコはマイペースな生き物。私がギスギスしてても、慌ただしくしてても何も動じない。存在感の大きさったらないです。私は一喜一憂しちゃうタイプ。だから、ネコって凄いなあって思うんです」。小さな体の中に、自分にないものを持っている。
0歳から人生をネコと共にしてきた。上品な白い毛並みのチンチラ「ムーンちゃん」は、吉岡より1カ月早く生まれきょうだいのように育った。「母はムーンちゃんに“この子を見守ってね”ってお願いしたんです」。願いが通じていたのか、ムーンちゃんは吉岡が20歳になるまで生きた。
今も京都の実家には5匹のネコがいる。灰色のキジトラ柄の4匹は家族で、母のヒナ、双子のチーズとクリリン、その弟のソーヤ。もう1匹は処分されそうになっていたところを連れてきた白茶の毛並みのくり助。「なかなか合えないから寂しいですけど、言わなくても母が写真を送ってくれます」。スマートフォンの中にある大量の写真は元気の源だ。
気ままに生きる姿に憧れる。「私は“気にしい”なので」。関西弁でいう、人目を気にする、神経質でナイーブな性格。「最近は“人の話聞いてないよね”って言われて。えっ、聞いてるつもりだったのに…って。この前は“興味ない物に興味あるって言ったでしょ”と言われました。家に帰ったらヘコんでます」。そんな時、ネコの写真を見ると「ありのままでいいんだよ」と言われている気がして少し楽になる。
18歳の春に人生が一変した。友達に誘われて見に行った大学生の小演劇。演目は劇作家つかこうへいさんの「銀ちゃんが逝く」「蒲田行進曲」。目にババッと火花が散った。感動のあまり演劇にのめりこんだ。小劇場に通い詰め、やがて学生演劇に出演するようになり、女優の道に進むことを決めた。
演技では「役柄のダメなところをしっかり見せよう」と心掛ける。放送中のTBS「ごめん、愛してる」で演じる凜香は、幼なじみへの恋心をいつまでも伝えられない女性。そのいじらしさこそ愛される。セリフを読み込んで、自分も苦しくなりながら演じている。
「ネコを見ててバカだな〜って思うこともある。くり助は水をあげると、必ず手を入れて温度を確認するようにかき回してから飲む。いつも同じ冷たい水なのに。でも、そういうところも可愛らしくて。誰にだってダメなところはある。私は人のダメなところを知って、そこを愛したいなって思うんです」
「2017上半期ブレーク女優ランキング」(オリコン調べ)で1位になった。上京して本格的に活動を始めてからまだ2年半ほどだが、連続ドラマに引っ張りだこ。「カルテット」では、笑顔で周囲の人を振り回すレストランの店員を好演。評価も知名度も高めた。でも、心の中は不安ばかり。「強い女性の役が多かったので、役に背中を押されて演技をしてこられた。私自身は“現場に行きたくない”“こんな役できない”って毎回思ってます」。
ネコのようにストレスフリーで生きていくには、まだまだ引き出しが少ない。それでも、演劇を始めた時の感動が、女優の道を突き進ませている。
「吉岡里帆という存在はどうでもいいんです。演じた役、作品で見た人の心が動くことがうれしい。私は役に対していつもひた向きで、純粋で、どんな役にも染まれる人でいるだけです」
そう話す吉岡の瞳はキラキラしていた。仕事に対する思いは誰にも左右されない。心の奥底には、動じない強さが備わっている。
≪「苦しいし切ない」役柄を好演 TBS「ごめん、愛してる」≫現在出演している長瀬智也(38)主演のTBS「ごめん、愛してる」(日曜後9・00)は、いくつもの悲劇が重なった大人のラブストーリー。吉岡が演じる凜香は、ピアニストのサトル(坂口健太郎)の付き人。キャラクターとしては普通の女の子だ。「今まで私が演じてきた役とは違う女性。一歩ずつ立ち止まって、考えながら演じています」。サトルのことを好きでいながら、別の女性と恋が成就する様子を見守っていく役柄で、「苦しいし、切ないです。でも私自身がそういう気持ちにならないと、無機質な人になってしまう」と話した。
◆吉岡 里帆(よしおか・りほ)1993年(平5)1月15日、京都府生まれの24歳。15年公開「マンゴーと赤い車椅子」で映画デビュー。同年のNHK連続テレビ小説「あさが来た」で、主人公あさの秘書見習だった丸眼鏡の田村宜を好演。昨年は結婚情報誌「ゼクシィ」の9代目CMガールを務めた。特技は書道、アルトサックス。1メートル58。血液型B。