宮脇咲良と横山由依の悔し涙は本物だった
2017年09月01日 10:00
芸能
印象に残ったのは、試合に負けた宮脇と横山がリング上で悔し涙を流したことだった。それを目にした時はプロレスラーとしてのパフォーマンスの一環だと思ったが、実は違っていた。試合後の記者会見で、レスラーから素に戻った宮脇は「負けて本当に悔しかった。これまで、あんなに泣いたことはない」と明かした。横山も「負けるのは悔しいと思った。勝つまでやりたい」と話した。
プロレスは勝敗を第一義とするジャンルではない。アマチュアの格闘技とは違う。強いレスラーもよく負けるし、ファンも必ずしも勝率にこだわっているわけではない。もちろん、強くなければ一流のレスラーにはなれないが、基本的に重要なのは、いかに観客を楽しませるかというエンターテインメント性の有無だ。宮脇も横山も当然、それをよく理解した上でリングに上がったはずだ。自分たちは負けたが、試合で観客をわかすことができた。十分に仕事はできた。客観的には問題はない。ところが、実際に自分たちが負けてみると悔しさがこみ上げてきた。なんで私たちが負けたのか…。勝つ姿を観客に見せたかった…。
その感情は理解できる。AKB48グループの中で常にトップ争いを続けているアイドルたちだ。年に一度、人気順を決める選抜総選挙もある。たとえプロレスという別ジャンルであっても、誰かに負けることが楽しかろうはずはない。この強い感情は、2人だけではなく、参加したメンバー全員に共通したものだと思う。そして、それこそが、今回のイベントを成功させた要因ではないか。レベルに関係なく、リング上の戦いは限りなく熱かった。
イベントは松井らのチャンピオンベルトを須田亜香里らが奪い去る形で終わった。プロレスによくある新展開だ。次回開催は全く未定だが、ぜひとも続きが見たい。 (専門委員)
◆牧 元一(まき・もとかず)編集局文化社会部。放送担当、AKB担当。プロレスと格闘技のファンで、アントニオ猪木信者。ビートルズで音楽に目覚め、オフコースでアコースティックギターにはまった。太宰治、村上春樹からの影響が強い。