葵わかな「わろてんか」で試行錯誤 笑顔にも種類が「正解見つけるの難しい」
2017年10月08日 11:30
芸能
一口に「笑顔」といっても、その作り手の悩みは深い。披露する場は、多くの国民が注目するNHK朝ドラ。19歳の女優が挑むには決して低くないハードルだ。
「日々、試行錯誤してます。台本に“鈴のように笑う”と書かれていると“鈴のように”ってどういうこと?と考えちゃいます。笑顔にも種類があって、例えば、自分を励ます笑い、相手のことを思っての笑い、相手の愛情を感じての笑い…。その時の感情に、どんな笑顔が適しているのか、正解を見つけるのが難しい」
実は5月のクランクイン前にトレーニングを行っていた。あえて変顔をしてみるなど、いろいろな表情を作る練習だった。その顔をプロデューサーや演出家に見てもらうために、自分で撮影した写真は100枚近くになった。
「顔全体をどれだけ多く使って笑えるかということに挑戦しました。日々そうやって顔をほぐしてきたおかげで、今は笑おうと思ったらニコッと笑えます。この役に決まるまでは、笑うことは当たり前過ぎて、しっかり考えたこともなかったんですけど」
このドラマのヒロインオーディションには2378人が参加。番組関係者は葵に決定した理由について「主人公が50歳になるまでを演じるので、素敵な笑顔と、落ち着きを併せ持っている人が必要だった」と説明している。
「てん(ヒロイン)は基本的に明るくてポジティブ。私は良く言えば慎重で、悪く言えばネガティブ。なぜ私に決まったのかという疑問は今なお消えてません。でも、自分から離れている役でも、演じづらさは感じてないです。殺人犯の役を演じるのに殺人が必要ないように、自分から離れている部分はお芝居で埋められると思っています」
役者としての前向きな思いが、その表情にくっきりと表れた。
◆現場では笑い疲れ「幸せな疲れ方だと思ってます」◆
笑顔作りは、撮影現場のムードの良さに助けられている。夫を演じる俳優の松坂桃李(28)が葵を笑わせようとおどけてみせることもあるという。
「笑い過ぎて“おなかが痛い”と思うこともあります。普通に撮影していても疲れるのに、そこに笑いが乗るから余計疲れる。“笑い疲れました”と言うと、松坂さんに“笑い疲れるなんて幸せなことじゃないか!”と言われます。確かに、幸せな疲れ方だと思って撮影してます」
撮影現場となっている大阪での一人暮らしも満喫している。基本的に月曜から金曜までが撮影で、土曜と日曜が休暇。健康管理を兼ねて食事は自分で作るようにしている。
「週末にたくさん料理を作り置きしておいて、1週間で食べきって、また週末に作ります。和食が好きなので、和風の味付けのものが多いですね。秋になってからは好きなキノコの炊き込みご飯も作りました。スタジオに持っていって控室にこっそり置いておくと、いつもなくなっているので、たぶんスタッフさんが食べてくれているのでしょう」
ストレス発散のためにカラオケ店に足を運ぶこともある。
「歌うのは、いきものがかりさん、miwaさん…。女性の曲が多いかもしれない。うまいわけじゃなくて好きなだけですけど」
朝ドラは視聴率が良くても悪くても騒がれる。ヒロインにかかるプレッシャーは並大抵ではない。
「撮影が始まる前は不安もあったけれど、始まってみたら、思ったより楽しかった。ヒロインはこうあるべきだという考えはありません。同じヒロインという立場でも、これまでいろんな人がいたでしょうから、私は自分らしく、この役を全うできたらいいと思っています」
そのピュアで真っすぐな心こそ、多くの人を引きつける笑顔の源となる。
≪NGKなど見学 東西の違い実感≫ヒロインを演じる参考として、大阪の繁昌亭、なんばグランド花月、東京の末広亭を見学した。「大阪と東京でたまたま同じ落語を聞いたのですが、言葉のニュアンスが違うだけで別の落語に聞こえた」と感心。「寄席の雰囲気も東西で違いました。関西の人たちは“ここに笑いに来ている”という感じで、笑い声で出演者の声が聞こえないくらいに盛り上がる。こういう場所なら私も恥ずかしがらず笑えると思いました」と関西の笑いの特質を語った。
◆葵(あおい)わかな 1998年(平10)6月30日生まれの19歳。神奈川県出身。2009年にスカウトされ、CMでデビュー。12年にアイドルユニット「乙女新党」のメンバーに選抜されたが14年に卒業。昨年、NHK・BSプレミアムのドラマ「舞え!KAGURA姫」に主演し好評を得た。映画「サバイバルファミリー」「陽だまりの彼女」「くちびるに歌を」などにも出演した。
◇わろてんか 明治から昭和初期の活気あふれる大阪が舞台。いつも周りに「笑い」を振りまくヒロイン・藤岡てん(葵)が夫婦で寄席の経営を始め、やがて「“笑い”をビジネスにした日本初の女性」と言われるまでを描く。