至難の業
2017年10月24日 10:00
芸能
2分25秒にまとめられた動画では、打撃の困難さを科学的に分析している。投手と打者の間はたったの18・43メートル。ここを時速160キロの剛球が通過するのに費やす時間はわずか0・4秒だ。人間の脳は、まずボールを視覚にとらえるために0・1秒を使う。スイングを決定し、筋肉にその命令を伝える時間は0・025秒。実際にバットを振るのは0・15秒。ゆえにボールを判断する時間は0・125秒しか残されない。この短時間で決断を下すのは不可能だ。なぜなら瞬きですら1回で0・3秒を消費するのだから――。
では、なぜ優秀な選手はそれができるのか?こんな素朴な疑問に対する解説はいささかざっくり過ぎるのだが、野球に対する基礎知識がほとんどないフランスの読者にとってはとても分かりやすい内容だと思う。
驚いたのはこの動画に対する反応だ。10月21日時点でサイト上に寄せられたコメントは32件。「野球がスポーツだなんて不思議」という意見の一方で「詳細な解説をありがとう」という謝意もある。コメントのやりとり中にアメリカン・リーグ優勝決定シリーズの中継を始めるユーザーまでいたのには笑ってしまった。ちなみに同紙のフェイスブックでは100件ほどのコメントが投じられている。フランス人の野球熱、結構あるんだな…。
この盛り上がりぶりを見て、ふと思った。東京の次、2024年パリ五輪の追加種目として、野球の可能性はどうだろう?
…まあ、無理かな。いまさら花の都に野球場を建造するとは考えられないし。そういえば1987年のパリ出張中、野球の「欧州クラブ選手権」が開催されている情報を得て現場に赴いたら、会場は自転車競技場だったっけ。(専門委員)
◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京生まれの茨城育ち。夏冬の五輪競技を中心にスポーツを広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。時々ロードバイクに乗り、時々将棋の取材もする。