パラ代表・中西麻耶 陸上へ恩返しの「陸王」出演 目標は「競技のメジャー化」「東京で金」
2017年11月03日 06:00
芸能
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これまでアスリートとしてテレビに出演することはあったが、ドラマは初めて。芝居をしたのも人生初で「中西麻耶として出演することとは全く異なることでした。初めは芝居をすることのコツも分からず四苦八苦していました」と演技の難しさを痛感した。それでも「ドラマで陸上競技を取り上げていただけるのは1人のアスリートとしてとてもうれしく、それに関われるということを光栄に思いました」との思いから猛稽古を敢行。「監督やプロデューサーの方、スタッフさんに長時間、稽古に付き合ってもらいました。おかげで役に入り込めることができるようになったのかな…。下手なりに役になり切るコツをやっとつかみ始めたので、競技との兼ね合いもありますが、また機会があれば挑戦してみたいですね」と演技に手応えも感じている。
「スポーツ番組で解説をしている姿を見たときにすごく輝いていて、的確に話していて、この人と仕事をしてみたいなと思っていた。オーディションをして、島のせりふを演じている姿を見て、良いなと思い起用した」と中西を抜てきしたプロデューサーの伊與田英徳氏も「初めての芝居とは思えないほど堂々としていた。さすが世界大会で活躍された方」と、その適応力の高さに舌を巻いた。
撮影を終えた心境を問うと「正直、ホッとした気持ちです。たくさんの方の熱意に触れることができて、今後の陸上生活にもとても良い経験を今回させていただけたんだなと改めて感じました」と笑顔。「今、私たちに求められているものはただ結果を出すだけではなく、色んなニーズに対応しながら競技生活を送ることできるプロ選手が多く生まれることで、この競技をもっとメジャー化させていくことだと思います」とトップ選手としての自覚をにじませ「なので、今回の経験は、陸上競技に大きく貢献できたんじゃないのかなと思います」と競技への“恩返し”実現に充実感をにじませた。
物語にも特別な思いがあった。「陸王」は経営危機にある創業100年以上の小さな老舗足袋業者「こはぜ屋」が会社存続を懸け、ランニングシューズの開発に挑む企業再生ストーリー。中西も競技に用いる義足の調整を、わずか3人で切り盛りしている茨城の小さな企業にお願いしているという。「義足って需要がなくて、採算がつかず商売でやろうとはなっていないんです。だから(義足作りは「こはぜ屋」のケガをしにくい靴作りと)通じるところがあって…」と明かし、「最後は職人の手で義足の微妙な調整をやってもらっています。機械はかなわないなってところがあるので」と職人への厚い信頼も口にした。「足袋と陸上ってあまり関わりがない感じですよね。(ドラマを見て)陸上とはジャンルが違うと思われるような企業の方でも何かできることがあるんじゃないかなって思ってもらえたら」とドラマの“反響”を心待ちにしている。
今後の目標はやはり1人でも多くの人に障害者スポーツを見てもらうこと。「会場にたくさんの人々に来てもらうために、たくさんの人々にパラアスリートのことを知ってもらえる競技生活をしていきたい。それは各大会で記録を出すことが大前提ですが、見に行きたいアスリートがいるから会場に見に行ってみようと思ってくれるファンをどんどん増やしていきたいです」と言葉に力を込めたパラリンピアンは「ファンの皆さまと一緒に最高の東京パラの会場を作り上げて、金メダルを獲得したいと考えています」と熱く決意を語った。東京では満員の競技場で最高の結果を―。「陸王」への出演は、そのための大きな一歩になるはずだ。
◆中西 麻耶(なかにし・まや)1985年(昭60)6月3日、大阪生まれの32歳。大分県由布市で育つ。2006年に事故で右膝下を切断するまで軟式テニスで活躍。08年北京パラリンピックは陸上女子100メートル6位、200メートル4位。12年ロンドン・パラリンピックは100、200メートルで予選落ち、走り幅跳びで8位。16年リオ・パラリンピックでは100メートルで予選落ち、走り幅跳びで4位。