佐藤浩市主演「石つぶて」清武英利氏原作完成前にドラマ化決定「本屋に通ったら終わり」
2017年11月03日 11:00
芸能
清武氏は1975年に読売新聞社に入社し、社会部記者として警視庁、国税庁などを担当。中部本社(現中部支社)社会部長、東京本社編集委員、東京本社運動部長を経て、04年にプロ野球・巨人の球団代表兼編成本部長に就任。07年からのリーグ3連覇などに貢献した。
11年11月、いわゆる「清武の乱」を理由に球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を解任され、現在はノンフィクション作家として精力的に活動。14年には「しんがり 山一證券 最後の12人」で第36回講談社ノンフィクション賞を受賞した。
97年に倒産した山一證券に踏み留まり、経営破綻の究明と会社の清算業務に就いた一群の社員を描く「しんがり」を2年前にドラマ化。岡野プロデューサーは「『自分の会社も明日どうなるか分からない』『どう働くべきか』と、視聴者の皆さんに身近なこととして感じていただくことができました。日曜夜のドラマだったので、週明け月曜に出社した時に『明日、上司と話をしてみようかな』『明日、部下と話をしてみようかな』と社会人の皆さんにきっかけを与えられた実感がありました」。手応えがあったと振り返った。
岡野氏が「是非、やりたい」と第2弾を目指す中、清武氏とのパイプからたどり着いたのが「石つぶて」だった。
「清武さん、今は何を調べているんですか?」
「実は“国家のタブー”に触れてしまった名もなき刑事がいたんだよ」
その時、清武氏は取材中。執筆は全く進んでいなかったが、清武氏にドラマ化の意向を聞かれ、岡野氏は即決した。結局、原作のゲラが上がったのは、その1年後、昨年12月。そこから脚本家の戸田山氏がドラマ用の台本に取り掛かった。
原作完成前のドラマ化決定。「私はドラマのプロデューサーが本屋に通うようになったら終わりだと思うようになりました。ネタがないから、本屋に行くわけじゃないですか。そうじゃなく、自分の発想や人とのつながりで、いいネタがあれば、別に本屋に通う必要はないと思うんです。あまり本屋に行くのはやめようかなと考えていたタイミングで、清武さんを日々せっつく中で、1個ポロッと出てきたのが『石つぶて』でした」。とかくベストセラーの映像化に走りがちな業界へのアンチテーゼのようにも思えた。
大学卒業後に制作会社テレパックに入社。民放の昼ドラなどをプロデュースしたが、08年、がんの特効薬をテーマにしたWOWOWの連続ドラマW第1作「パンドラ」に感銘。民放ならば製薬会社との兼ね合いがあるが、スポンサーから自由になれる作品を、と20代後半の09年にWOWOWに入社した。今回の清武氏をはじめ、12年のドラマWスペシャル「學」で組んだ脚本家・倉本聰氏、10年のドラマWスペシャル「なぜ君は絶望と闘えたのか」で組んだ演出家・石橋冠監督らから学び、信頼関係を築いてきた。
「傍から見ると面倒くさいやり方だと思われるかもしれませんが、絶対的に作品1つ1つへの愛情は変わってくると思います」。手の込んだ作り方が、今回の「石つぶて」のクオリティーも保証している。
【「石つぶて」ストーリー】警視庁捜査二課の情報係係長に斎見晃明(江口洋介)が着任。情報係には捜査四課時代、斎見と合同捜査を共にした偏屈な刑事・木崎睦人(佐藤浩市)がいた。その頃、木崎は情報収集のために足しげく通う元国会議員の事務所で、外務省のノンキャリア職員に贈収賄容疑があることを知る。折しも九州沖縄サミットの開催が決まり、外務省に法外な予算がつく時期だった。木崎は、省庁の中でも最も聖域とされる外務省への疑惑に興奮。しかし、かつて内閣府に対する捜査情報が漏れ、政治的な圧力でつぶされた経験があり、上司でも捜査情報の共有を拒む徹底ぶりだった。木崎が外務省という巨大な敵を標的にしていると直感した斎見は、単独捜査の無謀さを説き、強引に木崎に近づこうとする。その中、外務省への疑惑は政官界を揺るがす大事件に発展し、彼らの前に国家の壁が立ちはだかる。