苦戦フジ月9「海月姫」で逆襲!看板枠「今、難しいバランス」も若年層から広がる“普遍性”描く
2018年01月15日 08:00
芸能
![苦戦フジ月9「海月姫」で逆襲!看板枠「今、難しいバランス」も若年層から広がる“普遍性”描く](/entertainment/news/2018/01/15/jpeg/20180114s00041000272000p_view.jpg)
1987年4月クールの「アナウンサーぷっつん物語」からドラマ枠となった月9。91年1月期「東京ラブストーリー」、91年7月期「101回目のプロポーズ」、93年4月期「ひとつ屋根の下」、96年4月期「ロングバケーション」、00年10月期「やまとなでしこ」、01年1月期「HERO」、07年10月期「ガリレオ」など、社会現象になる作品を数多く生み出してきた。
しかし、16年から視聴率は苦戦。17年7月期「コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜THE THIRD SEASON」は期間平均14・8%と7作ぶりに2桁をマークしたが、17年10月期「民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜」最終回は月9史上最低の4・6%に沈んだ。
渡辺氏も「局としても日々議論していますが、月9は今、難しいバランスにあると思います。視聴者の皆さんが月9に抱くイメージや期待感は10年前と同じではないですが、かといって完全になくなったとも言えない。従来の月9らしさにとらわれすぎるのもよくないと思いますが、局を最も象徴するドラマ枠であることに変わりはありません」と月9の舵取りの難しさを率直に打ち明ける。
月9登板はドラマ制作センターのプロデューサー時代に担当した14年7月期「HERO」以来2回目。「『HERO』の時に受けた取材で、月9という枠は?と聞かれて『ホームランを狙いにいく枠』と答えた覚えがありますが、その思いは今も変わっていません。せっかくバッターボックスに立つのであれば、小さくヒットを狙いにいくというより、ホームランで点を取りにいく。そのためには、今、縮こまった企画を置きにいくより、企画の“登場感”を一番に考えました」。たどり着いたのが「海月姫」だった。
まずは累計発行部数420万部超えを誇る原作の認知度の高さ。そして「テレビアニメ化、実写映画化もされた後、連続ドラマはどのように描かれるのか。しかも月9という枠で、どういう化学反応が起こるのか。既に作品を知っている方々にも、興味を持っていただけると思いました」。昨年11月にはコミックス最終17巻が発売され「原作が最後まで描かれた今回のタイミングなら、連続ドラマ化の意味もある」。実写映画版のクライマックス、ファッションショーの場面は原作上は第7巻。今回は以降のエピソードもたっぷりと描かれる。
原作を知らない人はどうか。月海×蔵之介×修の三角関係の行方に“ややキュン(=ややこしくてキュンキュン)”というキャッチフレーズを打ち出した。
「冬の月9なので、心温まるラブストーリーの要素は入り口に置いた方がいいと思いました。それに、若年層しか楽しめないというものじゃなく、例えば40代以上の方々がトレンディードラマ時代の月9に求めていた王道のラブストーリーの要素が『海月姫』の中にもあるんだと伝えたかったんです。『海月姫』の世界観自体にはそれほど興味はなくとも、人間関係が入り組んだ、毎回、次の展開が気になるラブストーリーが好きな人には楽しんでいただけるということを打ち出したいと思いました。今回は単なる三角関係というより“女装美男子と童貞エリートの兄弟の間で揺れ動くオタク女子”という本当にややこしい設定なので、そこも視聴動機の1つにしていただければ」と狙いを説明した。
日々公表される視聴率は「世帯視聴率」。若年層を狙った番組より、人口分布の割合が大きいF2(女性35〜49歳)、F3(女性50歳以上)をターゲットにした番組の方が一般的には世帯視聴率に結び付きやすい。
渡辺氏は「ただ、企画の入り口として月9が目指さないといけないのは、まずはティーン(男女15〜19歳)、F1(女性20〜34歳)、F2といった若い人たちが中心に楽しめるもの。そこから広がり、上の世代にもリーチしていく。極端な話、年配層が見やすいものを最初から狙って企画を発想したら、月9という枠の個性がなくなってしまう。制作者は月9のイメージにあぐらをかいちゃいけないのですが、まずは若い人たちが楽しめるものを考え、なおかつ、そこに上の世代の方々も楽しめる要素を入れていく。そのやり方は以前から変わっていないと僕自身は思っています」とブレない。
年配層の取り込み。「海月姫」に照らすと、オタク女子などの個性的なキャラクターが織り成す、一見奇抜な世界に映るが「物語を通して“自分らしさを見つけていく”のとはまた少し違って、誰でも“自分のままでいいんだ”ということを、登場人物それぞれが模索するのが、この作品の最終的なテーマだと思います。原作は10年前から続いてきた作品ですが、描かれるテーマはむしろ2018年の空気というか、今を生きる人々の意識や価値観にマッチしていると思いました。その模索する過程の中に出会いや別れがあり、主人公に関して言えば初めての恋や人間としての成長がある。そういった普遍的なテーマを、連続ドラマならではの縦軸としてきちんと描いていきたいと思っています」
メーン演出は「リーガルハイ」シリーズや「デート〜恋とはどんなものかしら〜」、ヒットの記憶が新しい映画「ミックス。」など、数々のコメディータッチの名作を手掛けた石川淳一氏。芳根の体当たり演技や瀬戸の女装など、若いキャストも熱演で応えている。月9のラブコメといえば、06年10月期「のだめカンタービレ」など、ヒットの土壌はある。渡辺氏は「そこにハマれば、受け入れていただける」と勝算を見いだした。