大作に大抜てきの新人・石見舞菜香 重圧をも声に乗せた役作り
2018年02月23日 10:00
芸能
マキア役が決まった日のことを「夢じゃないかとビックリして、マネジャーさんの前で、ほっぺたをつねっちゃいました。“本当につねる人を初めて見た”とあきれられました」と苦笑い。「送られてきた台本を胸に抱えて家に帰りました」と、今もうれしそうに話す。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)」(2011年放送)などヒット作を連発する人気脚本家、岡田麿里氏が初めて監督を務める話題作。石見にとってデビュー2年目で手にした大役は“運命の作品”と言えるかもしれない。
実は声優になりたいと思ったきっかけが、小学生の時に見た「あの花」だった。同作でヒロインの声を担当し、憧れ続けてきた声優の茅野愛衣は、今作でマキアの親友レイリアを演じている。「茅野さんにはそれを伝えてしまいました。黙っておこうかと思ったんですが…」。デビュー前から尊敬してきた2人との出会いの作品となった。
自身が演じるマキアについて「不安を抱えていたり、おどおどしているところなど、素の自分に近い部分もありましたね」と感じている。物語では、孤児になった赤ん坊の男の子エリアルと出会い、彼を育てる“母”となる。10代の石見にとっては難役で、女優の志田未来(24)が13歳で主演したドラマ「14歳の母」など、若くして母になる女性の物語のビデオを見まくり、マキアの気持ちを想像した。
さらには「友だちに5歳くらいの妹がいたので、一日一緒にテーマパークに行かせてもらったりしました。仲良くはなれたけど、パワフルで疲れました」と体当たりで役作り。「これを毎日するなんて…子育てって大変なんだなと実感しました。最近、筋力の低下を感じています」。
初めてキャスト陣がそろって台本の読み合わせをしたのは2016年の9月。アニメの絵作りの前に、制作サイドが各声優のタイミングの取り方やクセを把握し、作品イメージをつかむための録音だった。その1年後の17年秋から本格的なアフレコ収録を行う異例のスケジュールだった。
最初の読み合わせを行った当時は、翌年春からのオンエアが予定されていたデビュー作「月がきれい」の収録現場に何度か出たことがあった程度。「マイクの前に立った経験も片手で数えるほどしかなかった」と経験不足は明らかで、「自分の表現の幅に自信もなく、作品を壊さないお芝居ができるのか本当に不安でした」と振り返った。
1年後の“本番”に向けて成長を誓った石見だが、岡田監督の要求はそんな思いとは少し違うところにあった。「技術的に成長してほしい面はあるけど、今の一生懸命さや“いっぱいいっぱい”な感じはマキアに通じている。変にこなれてしまうと違ってきてしまうので、そのままでいてね」と求められたという。
石見はこの言葉で「もちろん成長しなくてはいけないと思っていますが、余分な力が抜けました。変に構えることなく仕事に臨めるようになりました」とリラックスできたという。プレッシャーで不安いっぱいの自分も、自然に出せばいいと思えるようになったようだ。
マキアの声には、天性の声質や技巧だけで再現できない、今の石見だからこそ出せる気持ちが乗せられているのかもしれない。
=インタビュー後編は3月2日アップです=
◇石見舞菜香(いわみ・まなか)1998年4月30日、埼玉県生まれ。17年4月「月がきれい」でデビューすると、同年「ゲーマーズ!」や「URAHARA」「クジラの子らは砂上に歌う」など多くの作品に出演。1メートル58、O型。趣味は散歩と読書。
◇さよならの朝に約束の花をかざろう 人里から離れて暮らし、10代半ばの外見で数百年を生きる伝説の種族イオルフの少女マキアが主人公。長寿の秘密を求め、攻め込んできた軍によってイオルフの集落は壊滅。マキアは混乱の中で、親を亡くしたばかりの赤ん坊エリアルと出会い、母親となる。成長していくエリアルと、少女のままのマキアはやがてすれ違っていく。