西岡徳馬 要望あれば何でも応える“のせられ人生” 表現に上も下も横も縦もねえ
2018年03月25日 10:10
芸能
「俺にこれをやらせたら面白いと思ってる人がいたら、ご希望に沿ってやろうかなと思っちゃうんだよね。俳優なんてピエロみたいなもんだからさ」
昨年は全力で小島よしお(37)の「そんなの関係ねえ!」をやるCMも話題になった。「芝居もお笑いも全てパフォーマンス。俺らは言ってみりゃパフォーマーで表現に上も下も横も縦もねえやと最近思うんです」
映画「娼年(しょうねん)」(4月6日公開)で挑んだシーンも衝撃的だ。車いすの老人役で、若い妻と主人公の性行為を目撃する役どころ。三浦大輔監督(42)に熱く説得され、自慰行為に及ぶシーンも撮影した。
「現場はいやらしいとかじゃなくみんな必死の形相でやっていて、凄く真摯(しんし)な姿ばかりが見えたんで、それにほだされたというか、のったというか。乳首ドリルといい、本当にのせられ人生だ」と笑う。「人間生活で最も恥ずかしい部分も人に見せることを生業としてるのは、なんとヤクザな商売と思うけどさ、それが俳優なんだよな。非日常を見事に具現化するからお金がもらえる。大変なことだけどね」。演技論に熱がこもった。
高2の時に落第して退学し、父親に勧められて東宝芸能学校に入った。18歳だった1964年10月10日、東京五輪開幕の日。同校の生徒数人と新宿コマ劇場の舞台に斬られ役で出演した合間、屋上に上がると国立競技場の聖火が見えた。「芸能学校は遊びに行ってただけだし、俺、こんなところで何やってるんだろうと思ったよ」
しかし講師だった元女優の村田嘉久子さんの一言が転機になった。授業中に「あんたいい役者になるよ」と声を掛けられ、「青天のへきれき。いい役者ってなんだろうと引っかかって、ちゃんと勉強しなきゃいけないと思った」。高校に入り直し、玉川大学に進んで演劇を学んだ。人生を変えた言葉がもう一つ。文学座に在籍中、行きつけの飲食店の店主に「西岡さんは地方部の役者。全国区になるには映像をやるしかない」と言われ、79年に退団して映像の世界に飛び込んだ。
芸名を「徳馬」に変えたのも同年。本名は徳美(のりよし)で演出家の蜷川幸雄さんら古い演劇仲間には「とくみ」と呼ばれていたが、女性に間違われる名前で子供の頃から嫌だった。名付けた父親が同年に亡くなり、女優・加賀まりこ(74)の自宅で仲間と麻雀をしていた時、ハト派政治家として活動した元参院議員の宇都宮徳馬氏をテレビで見て「響きがいいなと思って“俺も徳馬に変えちゃおうかな”と言ったら、みんなも“いいじゃん”てね」。「西岡徳馬」になって来年40年を迎える。
ゴルフのベストスコアは2アンダー。体幹トレーニングやストレッチを怠らず「俺より若くてうまい人とやるのが好きなの。飛ばないと悔しいから」と意気軒高。仕事にも貪欲で「ご希望があれば何でもお応えしたい。自分が思ってることって狭いから思いもよらないことを言われると“そう?”ってのっちゃう」。枠にとらわれないパフォーマンスを自身が楽しみ、人の心をつかんでいる。
<共演者の役者魂に感心>「娼年」は松坂桃李(29)が女性専用コールクラブで働く“娼夫”を演じ、劇中の半分以上がセックスシーンという話題作。西岡は「桃李は昼飯も食わずに必死になってやっていて(妻役の)佐々木心音はケツをひっぱたかれ過ぎて紫色になってたけど弱音を吐かなかった」と共演者の役者魂に感心。完成作を見て「ポルノチックじゃなくみんな必死。真面目な映画だと思いました」と語った。
◆西岡 徳馬(にしおか・とくま)1946年(昭21)10月5日生まれ、横浜市出身の71歳。小学1年から3年間、児童劇団で子役として活動。玉川大学文学部卒業後、70年に文学座に入団し、79年に退団。91年、フジテレビのドラマ「東京ラブストーリー」で主人公(鈴木保奈美)の上司を演じ大人気に。12年に主宰の俳優養成所「ドラマスクールレッドホースヒルズ」を開校。最近の主な出演作はNHK「べっぴんさん」、映画「関ケ原」など。