松岡昌宏 ミタゾノ女装は「カレー粉」その心は…長期シリーズに意欲
2018年04月08日 11:00
芸能
「ミタゾノは、僕らも子供の頃に見ていた“キャラクター先行の作品”なんですよね。僕は青島幸男さんは存じ上げないんですけど“意地悪ばあさん”(青島さん主演のドラマ)は知っている。“ミタゾノさん!”と呼んでくれた子供たちが大人になっても覚えていてくれれば、役者冥利(みょうり)に尽きます」
出演依頼を受けたのは一昨年、39歳の時だった。連続ドラマの主役という大任だが、演じるのは極めて異色な女装の「家政夫」。身長1メートル80超で、ダンディーな松岡のイメージとは大きなギャップがある。
「ちゅうちょはなかったですね。“突拍子もないことをやりましょう!”というのが僕のスタイル。事件でも何でも、予想しなかったものが記憶に残る。“あのTOKIOの、でかい松岡が女装する…。OK、完璧だ”と思いました。たとえ失敗したとしても、それはテレビ局のせいですから(笑い)」
誰も演じたことのない役柄への興味があった。昨年、主演した時代劇「名奉行!遠山の金四郎」のように、多くの名優が演じてイメージが確立されている主人公とは違い、役作りで冒険することができる。
「僕が初代だから、好きにやっていい。監督とディスカッションしてOKが出たら、それがミタゾノになる。ミタゾノは分かりやすく言うと、カレー粉。例えば味噌汁を最高のダシを使って作っても、カレー粉を入れればカレー味になってしまう。でも、カレー粉は多くの料理に使える。ミタゾノはそういうヤツなんです」
自らカレー粉になることは役者として大きな“賭け”だったはずだが、結果として、その賭けに勝った。その証が今回の続編制作だ。
今回も好評ならば、その先に、「相棒」や「ドクターX」のような長期シリーズ化が見えてくる。
「ほかの役者さんはどう考えていらっしゃるか分からないですけど、僕はシリーズになるのは素敵なことだと思うんです。ただ、それは題材によります。“好評だから続編を”と言われたけど、かたくなにやらなかった作品が僕にもあります。その一作で満足してもらえているのなら、そこで終わらせないといけない。でも、ミタゾノはまだ満足してもらっていないと思うんです。時代劇の『暴れん坊将軍』や『水戸黄門』に似ている。だから、1本でも多くやりたいというのが本音です」
もちろん、シリーズ化を踏まえ、ワンパターンに陥るつもりは一切ない。
「いい意味の“お約束”はあっていいんだけれど、マンネリは良くない。落語で言えば、古典と新作のバランスに気をつけたいと思います。それに、気持ちとしては、このパート2で終わらせるつもりで全精力を注ぎます」
このドラマが人気になればなるほど「松岡昌宏の代表作は『家政夫のミタゾノ』」と思う人が増えるだろう。女装のキャラクターは、これまでの俳優業の中で本流とは言えず、役者として複雑な思いにとらわれることはないのか。
「いいんじゃないですか。“松岡といえばミタゾノ”と言われればうれしいです。代表作はいくつあってもいい。例えば松方弘樹さんだったら、僕は『仁義なき戦い』(映画)だけれど、『HOTEL』(ドラマ)という人もいれば『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(バラエティー)という人もいるでしょう。僕だって『ザ!鉄腕!DASH!!』(バラエティー)かもしれない(笑い)」
いずれにせよ、このドラマが、長い芸能生活の中で大きな位置を占めることだけは確かだ。
「自分の引き出しが一つ増えるのであればいい。“ミタゾノ”という引き出しは僕の人生の宝です」
そう言い切る表情が新たな戦いでの勝利を予感させた。
◆松岡 昌宏(まつおか・まさひろ)1977年(昭52)1月11日生まれ、札幌市出身の41歳。90年、TBS「愛してるよ!先生」でドラマデビュー。バンド「TOKIO」にドラマーとして参加し、94年に「LOVE YOU ONLY」でCDデビュー。04年、ゴジラシリーズ50周年記念作品「ゴジラ FINAL WARS」で映画初主演。17年、「家政夫のミタゾノ」で第6回コンフィデンスアワード・ドラマ賞主演男優賞を受賞。