三谷幸喜氏「黒井戸殺し」長尺3時間まったり?「そう感じたらクリスティーのせい(笑)原作通り」
2018年04月13日 10:00
芸能
「アクロイド殺し」は、クリスティーが1926年に発表した6作目の長編小説。名探偵エルキュール・ポアロのシリーズ3作目に当たる。英国の片田舎キングズ・アボット村で、村の名士アクロイド氏が短刀で刺殺されるという事件が発生。その直前には、アクロイド氏の婚約者フェラーズ夫人も睡眠薬による自殺を遂げていた。町医者・シェパードは2人の検死を担当し、異常事態を手記に書き留める。
シェパード医師の手記を読む形を採り、物語は展開。結末におけるトリックの斬新さは当時世界中に衝撃を与え、そのトリックをめぐり「フェア・アンフェア論争」が引き起こされ、長らく「映像化不可能」とされてきた。
「黒井戸殺し」は物語の舞台を昭和27年(1952年)の日本に置き換え。名探偵ポワロ→勝呂(萬斎)と相棒を組み、事件の謎に立ち向かうシェパード医師→柴平祐は大泉洋(45)が演じる。萬斎のドラマ出演は「オリエント急行殺人事件」以来3年3カ月ぶり。三谷氏作・演出の舞台「ベッジ・パードン」(11年)で共演した萬斎と大泉だが、テレビドラマ共演は初となった。
そのほか、余貴美子(61)草刈民代(52)向井理(36)佐藤二朗(48)和田正人(38)が三谷作品に初参加。三谷作品の常連と言える松岡茉優(23)秋元才加(29)寺脇康文(56)藤井隆(46)今井朋彦(50)吉田羊(年齢非公表)浅野和之(64)斉藤由貴(51)遠藤憲一(56)と豪華キャストが勢揃い。演出は「世にも奇妙な物語」シリーズや「リーガルハイ」シリーズ、「マルモのおきて」などの城宝秀則氏が担当した。
「学生の頃からクリスティーが好き」だった三谷氏は「自分が脚本家になって、クリスティーの原作を脚色することができるという本当にラッキーな機会を頂きました」と喜びもひとしお。「前回の『オリエント急行殺人事件』の時もそうだったんですが、脚本家として改めて原作を読み直すと、本当に綿密にできている。今回の『アクロイド殺し』も変にイジったりカットしたりすると、全体の構成がどんどん崩れるし、ましてや登場人物の数を減らしたり増やしたりすると、クリスティーの意図からズレてしまいます。今回も可能な限り、原作通りに脚色しました」と、こだわりを明かした。
「僕が何か工夫を加えるということは、クリスティーの作品を壊すことにしかならないと思ったので、僕なりの工夫は何もありません。あるとするならば、どれだけ原作のテイストを残すか。小出しにする謎の順番も含めて、可能な限り、原作通りにしました。それだって意味があるあるわけだし。読めば読むほど、それが分かるんですよね」
ただ、ドラマとしては長尺の3時間。「まったりしすぎなんじゃないかという不安もあったんですが、視聴者の皆さんがそう感じたら、それはクリスティーのせいであって、僕は関係ありません。原作通りですから、そういう言い訳もできるなと」と笑いを誘いながらも「3時間の中で殺人事件は1回しかないんですが、それでも、お話がおもしろければ、これだけもつんだよということを改めて示したかったし、あとはどうやって犯人をあぶり出していくか、推理の道筋を十分楽しんでいただきたいと思います。そういう部分はクリスティーは本当にうまいんですよね。小出し小出しに真相が見えてきます」と手応えを示した。
映画化・ドラマ化もされた「八つ墓村」「犬神家の一族」など、作家・横溝正史氏の「名探偵・金田一耕助シリーズ」があるが、今回「アクロイド殺し」の映像化にあたり、プロデューサーには「横溝さんの未発表小説が発掘されて、それが映像化されたような作品になるといい」とイメージを伝えた。戦後日本への置き換えは「割とうまくいったと思います」とし「日本のテレビドラマだって捨てたものじゃない、こんないい作品ができるんだよということを改めて視聴者の皆さんに感じ取っていただきたいと思います。頭の中には『クリスティーのあれもやりたい、これもやりたい』と今後の構想もあります。あと50作ぐらいはできるような気はしています」とシリーズ化への意欲を語った。