【俺の顔】高嶋政伸「怪演、はうれしい」 目にこだわり芝居に深み 右頬の傷は“役者の証”
2018年04月15日 10:30
芸能
謎めいた事件が題材のサスペンス作品で、ヒロイン(広瀬すず)を追跡する役どころ。「いつも目にこだわります。役の一番の隙みたいなもので、それで役を立体的にしていきたいと考えています」。
20代、30代で演じてきたのは人のいいホテルマンや警察官。40代からはテレビ朝日「DOCTORS〜最強の名医〜」で主人公と敵対する強烈なキャラクターや、16年のNHK大河ドラマ「真田丸」であくの強い北条氏政などを演じ、怪演ぶりが話題になっている。
「怪演と言っていただけるのはうれしいです。でも、それだけじゃなく普通の人間をきちんと演じることも必要。型がないと型破りはできないわけですから。基礎の演技は常に勉強しています」
88年にNHK連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」でデビューし、今年31年目。それでも日々、長い文章を読んで滑舌や声の調子を整え、若い俳優たちと戯曲を読むなど稽古に励んでいる。
「映画や演劇を見るのももちろん必要ですけど、プロ野球選手になりたいといってプロ野球を見ているだけでは選手にはなれないし、ミュージシャンもピアノの良いフレーズが浮かんでも手が動かなければ表現できない。現場で監督がやってほしいということにできれば100%応えたいので、そのためには日々の訓練、鍛錬しかないと思っています」
右頬にうっすらと縦数センチの傷がある。元々直径1センチほどのほくろがあり、18歳の頃、手術で除去した。両親は俳優の高島忠夫(87)と元タカラジェンヌの寿美花代(86)で、兄の政宏(52)も俳優の役者一家だが、小3の時にスティーブン・スピルバーグ監督の「ジョーズ」に感動し映画監督を志望。「ほくろが非常にコンプレックスで、出演する方は無理だという気持ちもあった」と打ち明ける。
学生時代に作った自主映画で280万円借金し、両親に土下座。父から「借金を肩代わりするから役者になれ」と言われ、翌日から父と兄の付き人になった。「いろんな事務所に行っても“そのほくろ、なんとかならないの”と言われて一念発起したんです。ビリビリビリって音がして取れて、18年間のコンプレックスの断末魔のようでした。この傷が俳優になった証ですね」
長年抱えたコンプレックスによる心の傷も、人間的な奥行きを生み出した。「乱反射するいびつな鏡の方が、いい人をやるときも悪い人をやるときも複雑な人物像を作れる。バラのとげで体に刻印されるように、一度体験したものは必ず出てくるので、自分の芝居は人生の縮図みたいなものです」
15年に医師の女性と結婚し、昨年8月に長男が誕生。すくすく成長する子供と共に、自身も変化した。「子供から風邪をうつされて1カ月くらい治らなかったりする。他の人にうつされたら、その人を奈落の底に落とす計画を作って復讐(ふくしゅう)の鬼になると思うけど、子供からうつされるとそんなに悪くない。おしっこをかけられても、これもありかなと。思いも寄らない変化でした」と笑う。
純真な子供の表情は、芝居のヒントの宝庫でもある。「子供の表情は面白い。泣き方にもいろいろあったり、役を作る上で凄く勉強になります。子供の無垢(むく)な目は悪人役でも生きると思うんです」。圧倒的な努力と熱心な研究心で、ますます演技の引き出しが増えそうだ。
≪三池監督作品に初出演≫「ラプラスの魔女」は作家・東野圭吾氏の小説が原作で、櫻井翔(36)が演じる大学教授が事件に挑むサスペンス。高嶋は三池崇史監督(57)の作品に初めて出演。「撮影初日に監督から“シーンのつながりとかは考えずに動きたいように動いてください”と言われ、とても気持ちが軽くなりました」と振り返る。映画監督への意欲は「それはもうないです。代償が大きすぎる賭けですね」と苦笑いした。
◇高嶋 政伸(たかしま・まさのぶ)1966年(昭41)10月27日生まれ、東京都出身の51歳。成城大学文芸学部卒。88年にNHK連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」でデビュー。90年に始まったTBSドラマ「HOTEL」は人気シリーズとなり02年まで放送。同局「こちら本池上署」もシリーズ化された。主な出演作はドラマ「ダブル・キッチン」「DOCTORS〜最強の名医〜」「真田丸」、映画「探偵はBARにいる」など。1メートル80、血液型B。