初主演作が海を越える!感無量の小林稔侍
2018年08月10日 09:30
芸能
ニュースが待っていた。今年1月27日に封切られた初主演映画「星めぐりの町」(監督黒土三男)が8月下旬から台湾で上映されるという。「うれしいです」と言葉少なに喜ぶ小林は黒土監督と一緒に27日に現地に飛び、初日の舞台あいさつに立つ。
「星めぐりの町」は「冬の華」「鉄道員(ぽっぽや)」「家族はつらいよ」など名バイプレーヤーとして活躍してきた小林がデビュー56年で初めて巡りあった主演作。東日本大震災で家族を失った少年の心の再生を見守る豆腐店の店主を存在感たっぷりに演じた。
1月、東京・銀座の丸の内TOEI(2)で行われた初日舞台あいさつを取材した。共演の壇蜜(37)や高島礼子(54)とともに登壇した小林は「10期ニューフェースとして入社したのが昭和36年(1961年)。東映の劇場で主演作の舞台に立てるのは夢のよう」と目を潤ませた。あのシーンが今でも目に焼き付いている。
良質な作品はSNSや口コミなどで評判になり、じわじわと“公開の輪”を拡げていって、そして今回海を越える。これぞ役者冥利(みょうり)というものかもしれない。無名時代から何かと目をかけてくれた高倉健さんも天国で目を細めているだろう。
6日には主演ドラマ「税務調査官・窓際太郎の事件簿34」(TBS)が放送されたばかり。同ドラマがスタートしたのが1998年だから、ちょうど20年になる。息の長いシリーズになっているのは内容の面白さに加え、小林の人気によるところが大きい。
6日に広島は73回目の原爆の日を迎えたが、小林は現在、東京と尾道を行ったり来たりしている。昨年「花筐/HANAGATAMI」で毎日映画コンクールの日本映画大賞に輝いた大林宣彦監督(80)の新作「海辺の映画館―キネマの玉手箱―」(来春公開)に出演中だ。がんと格闘しながらも大林監督が約20年ぶりに故郷の尾道でカメラを回している作品は、映画館で和製ミュージカルを鑑賞中の3人の若者がスクリーンに迷い込み、時空を超えた旅をする物語。オリジナル脚本で、広島への原爆投下も織り込まれる。
「さびしんぼう」(85年)」「野ゆき山ゆき海べゆき」(86年)「漂流教室」(87年)など、80年代に大林組の常連でもあった小林に寄せられたラブコール。意気に感じて現場を満喫している。公開が楽しみだ。
◆佐藤 雅昭(さとう・まさあき)北海道生まれ。1983年スポニチ入社。長く映画を担当。