申し訳ない
2018年12月25日 08:00
芸能
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そんな話をよりによってご本人にぶつけてみたのは3年前、王将戦の打ち上げの席だった。お互い赤ワインを適度に飲み進み、柔らかなムード。えい、勢いだ。この場で聞いてみよう。羽生さん、カクカクシカジカなんですけども。
「えっ? あっ、そうなんですか? いやなんか、全然気にしてませんよ。はははは」
ケラケラと屈託なく笑いながら否定していただき、心の底から安心した覚えがある。続けてこんなエピソードも明かしてくれた。
「とある対局でとあるホテルに到着した際ですが、宿の皆さん一様に表情がこわばってまして。聞いたらその会場で私、勝っていない(笑い)。でも私は、そういうのを全く気にしないタイプなんです。本当に大丈夫ですから」
今年(2018年)の4月には名人戦の開幕局に出向き、通算1400勝目となる勝利を取材することができた。これが羽生タイトル戦取材初白星。敗れた佐藤天彦名人には申し訳ないけれども、心の中に引っかかっていた何かが取れたような気がした…のだが。
7月の棋聖戦最終第5局では終日会場で待機し、タイトル100期到達の瞬間に備えながらも、書いた原稿は豊島将之八段の初戴冠。再び大偉業に王手がかかった12月の竜王戦第6局は、藤井聡太七段の通算100勝取材を終えて疲れ切った体にむち打ち、翌日早朝の飛行機に飛び乗って鹿児島県指宿市入り。現場到着直後、飛び込んできた光景は2日目昼食休憩前の投了劇だった。う〜ん。やはり、そうなのか。
無冠となった希代の名棋士にとって、次のタイトル戦がいつになるのかが注目されている。最短なら19年4月開幕の名人戦だ。ご本人は歯牙にもかけていないとはいえ、その場に筆者がお邪魔していいものなのか、果たして。年末仕事が手に付かないほど思い悩んでいる。(専門委員)