海老蔵は飲み友達、呼び名に困る「“団十郎”は重い」 金田一少年原作者・樹林伸氏
2019年01月15日 10:00
芸能
出会いは2008年春。共通の知人を通じ、海老蔵から「石川五右衛門を新作歌舞伎にしたい」とのオファーを受けた。当初は乗り気でなかったというが、招待されたこんぴら歌舞伎(香川県琴平町)で直訴を受けて一変した。
「歌舞伎を不自由な表現と思っているでしょう。違いますよ。何でもできます」との持論に感銘を受けて「やるよ!」と即決したいう。「石川五右衛門」は翌09年に初演。その後、何度も再演される人気演目となった。
海老蔵も積極的にアイデアを出したというが、樹林氏は「時々、無茶な注文してくるんですよ。“何とかして下さいよ〜”って」と苦笑い。
水中で鯉をつかむ激しい動作が人気の「鯉つかみ」を頼まれて入れたこともあったそうで「ストーリー上、大変で“どうすりゃ入るんだよ!”と思ったけど、鯉をシャチに変えて入れたらハマって良い場面になった」。こうしたやり取りがいくつもあったという。
不思議とできてしまうケースが多かったそうで「僕も頑張って何とかするからね。ただ、彼は歌舞伎とは何か、面白いとは何かを肌感覚で理解している。そんな役者は、そんなにはいないと思う」と“クリエーター同士”のような感覚を持っている。
仕事を離れたら飲み友達。だが、最近の海老蔵は麗禾ちゃん(7)勸玄くん(5)の育児もあり、飲みに行く頻度は減ったという。「出会った頃の彼はやんちゃだったけどね。落ち着いてきましたね」。
襲名後の呼び方については「これまでのように呼び捨てするには“団十郎”は重い。(本名の)タカトシで呼んでいいかな…。どう呼ぶか迷うなあ」と苦笑い。
勸玄くんと父子で「石川五右衛門」を演じてくれる日を心待ちにしている。「団十郎を襲名した海老蔵と、海老蔵を名乗る勸玄くんが『五右衛門』で共演してくれる日が楽しみ。そのとき自分が何歳か分からないが、それまで自分も頑張りたい」と、今後も海老蔵の、団十郎の演技を追い続ける。
◆樹林 伸(きばやし・しん)1962年7月22日生まれ、東京都出身。87年、講談社に入社し「週刊少年マガジン」編集部で漫画編集に携わる。99年、原作者として独立。代表作に「金田一少年の事件簿」「探偵学園Q」「サイコメトラーEIJI」「クニミツの政」「シバトラ」「神の雫」など。亜樹直、天樹征丸など複数のペンネームがある。なお、亜樹直はノンフィクション作家の姉・樹林ゆう子との共同ネーム。「神の雫」で日本のワイン普及に貢献したとして、ボジョレワイン騎士団から「騎士号」の称号を贈られる。現在、週刊モーニングで「マリアージュ〜神の雫 最終章〜」を連載中。