渡辺棋王先勝 昨年11月から12連勝、8筋叩き合い制した
2019年01月15日 05:30
芸能
無風だった初日から一転、渡辺の封じ手は戦いの火ぶたを切る[先]4五歩だった。「開戦の頃合いかなと思っていた」と渡辺。この手を本命視していたという久保も[後]同歩と応じ、以降両者ノータイムの応酬が続く。「開戦は歩の突き捨てから」の格言通り渡辺は3、8筋の歩を次々に取らせ、手持ちの角を6六に打ち据える。狙われた飛車も早々に切り、攻勢を強めた。
そこからは互いの王が鎮座する8筋で、怒とうの叩き合いが始まる。「叩きの歩」は、狙う駒の前に犠牲の歩を打ってつり上げる手筋。まず久保が[後]8七歩と陣形を乱し、つり上げた金をさらに[後]8六歩と叩いた。そして渡辺の83手目[先]8三歩が、痛烈な叩き返し。敵将をおびき寄せてから[先]6六角と悠々と引き上げ、8四の地点は守り切れない形になった。
昨年度の渡辺は竜王失冠や順位戦A級陥落など苦難が続き、プロ入り後初めて負け越しを経験した。プロ間ではソフト研究の影響もあり、王の囲いより攻守両面でバランス重視の戦法が主流に。守りを固めじっくり攻める棋風で結果を出してきた渡辺は「作戦面で少し迷いがあった」と振り返る。
雌伏の時期にも地道な研究を続け、迷いが消えた。順位戦B級1組を開幕10連勝でA級復帰、トップ棋士で争うJT杯を制し、王将戦挑戦者決定リーグで完全復活した。昨年11月からの連勝を12に伸ばし、掛川対局では4戦4勝と不敗神話も継続。「まだ始まったばかり。次までに作戦を練ってまた頑張りたい」と気を引き締めた。