森山未來「いだてん」たけしと同一人物役「楽しい」 現場で落語トーク
2019年03月29日 06:00
芸能
「本をたくさん読みました。ラジオやレコードの音源、テレビの映像が残っているのですが、晩年のものがほとんど。皆さんが知っている志ん生さんは70代ぐらいの姿だと思います。それ以前の姿はあまり知られていない。志ん生さん自身が若い頃の話もしているのですが、噺家(はなしか)なので結構話が盛られていて。名前を何回変えたという話も、その時々によって内容がまちまちで。半分史実っぽい人で、半分資料としてちゃんと残っている人なので、架空と史実の間みたいな感じですね」
――古今亭志ん生さんの魅力を教えてください。
「志ん生さんが話すから面白いエピソードに聞こえるかもしれませんが、凄く大変な思いをされたと思います。それでも、自分の壮絶な人生をどこか俯瞰(ふかん)していて、それを自身の言葉で噺に起こしてしまう。それでお客さんを引き付け、笑いに変える。いつからそういう風にできるようになったのか分かりませんが、落語の世界の中に生きているような人なんだなと。落語ってひどい話もたくさん出てきますが、噺家が話すことによって、どことなく愛きょうの漂ったものに変換され、エンターテインメントになっていく。志ん生さんは落語で話している内容と自分がやっていることが全部“地続き”になっている。そこに人生を捧げた人。そこが本当に凄いなと思いました」
――全盛期の志ん生さん役のビートたけしさんと同一人物を演じる上で意識したことはありますか。
「たけしさんに寄せた方がいいのか悩みました。凄く光栄なのですが、僕が落語を勉強した結果、たけしさんになるという流れが全然分からなくて(笑)。たけしさんが撮影されているスタジオに行って“志ん生さんに寄せたりしているのかな?”と思って拝見したのですが、髪の毛が金髪で(笑)。想像以上に、たけしさんはたけしさんでやってらしたので、その姿を見て(悩むのは)もういいかなって。楽しくやらせてもらっている感じです」
――たけしさんと現場で話をしましたか。
「スタジオでなかなかお会いする機会がなかったのですが、一度たけしさんと近づく話があり、そこで初めて一緒に撮影しました。楽屋に戻らず、セットの裏でモニターを見ながら座っていて。物静かなんですけど、周りをシャットアウトするような人ではなく、気軽にしゃべってくれました。落語の立川流の話になって、その後は“古今亭って温かくていいよね”とおっしゃってました」
――森山さんはチーフ演出・井上剛氏が手掛けたドラマ「その街のこども」(10年)や、大根仁監督の「モテキ」(10年)などの作品に出演。そこから井上氏と大根監督の交流が始まり、今回の出演が決まりました。
「井上さんと大根さんとは別の現場で一緒に仕事をしていて、すごく信頼している人たちです。その2人にいきなり飲み屋に呼び出されて…。まず大根さんが(大河初の外部演出家として)NHKで初めて演出をやると聞いてビックリしましたし、チーフで井上さんが入る。そこで一緒にやらないかって言われて、断る理由が見つからなかったですね。これはもう逃げられないなという感じでした」
――今回が初出演となる大河ドラマ。現場の雰囲気はいかがですか。
「拘束期間が長いです(笑)。井上さんと大根さんに口説き落とされた時点でやると決めましたし、長いということ以外はストレスになるようなことはないですね。技術、美術、制作も含めて皆さん凄くしっかりしている。今まで積み上げてきたものがNHKにはあり、映画や民放のドラマでやろうと思ってもできないであろう貯蔵量というかノウハウがあるので、それはやっぱり凄いなって思います」