3・11描く月9「監察医 朝顔」金城P「腹くくって」設定変更 上野樹里の初回嗚咽の舞台裏
2019年07月15日 07:00
芸能
物語設定のアレンジについて、金城プロデューサー(P)は「原作の漫画が発刊されてから年月が経っているので、今、ドラマ化するのであれば、やはり東日本大震災だろうという考えが最初にあったのですが、そもそも震災で母を亡くしたという設定を生かすべきかどうか悩みました。そういう過去のない主人公を描くこともできましたが、東日本大震災について調べると、あれから8年経った今なお、ご遺体が見つかっていない方がたくさんいらっしゃるということを初めて知りました。東京は少しずつオリンピックも近づいて、新しい元号にもなって、どこか華やかな空気がある一方、何年もご遺体が見つからないご遺族がどんなつらい気持ちなんだろうと思った時、やはり、やらせていただくべきなのかと腹をくくって、東日本大震災に設定を変えたいと原作の先生や上野さんにもご相談をさせていただきました」と説明した。
上野とは小児外科医を描いた同局の昨年7月期「グッド・ドクター」に続くタッグ。「私は何か調べる時は実際にそこへ行ってみたいと思う方なのですが、『グッド・ドクター』の時、上野さんも私と同じように病院へ行ってみたいとおっしゃってくださって。その病院見学の中で、すべての方が助かるわけじゃないということを上野さんと一緒に目の当たりにし、『グッド・ドクター』の次は、人が亡くなることを扱うドラマを作りたいと思いました。企画の立ち上げと上野さんの起用が同時にあったような感じです」
第1話のラスト。東北を訪れ、母の記憶がよみがえった朝顔は1人、嗚咽。金城Pは「スケジュールの事情があり、クランクインが東北で、その初日に上野さん演じる朝顔が電車の中で涙を流す、しかも台詞もない、相手もいない、途中に回想が入り、それを思い出して、どんどん泣けてくるというシーンだったのですが、上野さんはカメラが回り続ける中、30~40分ずっと泣き続けていました。監督が回想明けのキューを出したら、より泣いて…。本当に凄いと思いました。鳥肌が立ったといいますか。カットがかかって、カメラが止まった後、上野さんに聞くと、周りの風景などはあまり見ず『ただ泣けてきたから、普通に泣いていました』と。とんでもない女優さんだと改めて思いました」と感嘆した。
上野はクランクイン前に東京医科歯科大学、千葉大学の法医学教室を取材。今作の法医学監修も務める東京医科歯科大学の法医学分野教授・上村公一氏から話を聞き、検査室、遺体を保存する冷蔵室、解剖室を見学した。
そして、キャラクター設定の変更から、4月下旬に岩手県陸前高田市を訪問。12年3月放送のテレビ東京「上野樹里が行く!桜前線大追跡~ヒマラヤから日本列島5400キロの桜ロード~」で苗を植えた桜と7年ぶりに再会。陸前高田市議会議員の福田利喜氏から当時の体験談などを聞きながら、遺体安置所となった小学校の体育館や復興のシンボルとなった奇跡の一本松などを巡った。東日本大震災で親類を亡くした遺族会の人たちとも会い、8年経った胸の内など聞いた。
作品に真摯に向き合う姿勢と現地に足を運ぶ綿密なアプローチ。上野と金城Pが今作に込めた思いが伝わるに違いない。