国広富之66歳、衰え知らぬ“芝居愛” 好き度合い「きっと上がってる」

2019年08月18日 10:00

芸能

国広富之66歳、衰え知らぬ“芝居愛” 好き度合い「きっと上がってる」
笑顔を見せる国広富之 Photo By スポニチ
 【俺の顔】国広富之(66)が俳優を続けている理由は「好きだから」と実にシンプルで明快だ。しかもその気持ちは、TBSドラマ「岸辺のアルバム」での鮮烈なデビュー時と比べてもさらに増しているという。ドラマ、舞台、映画と幅広く実績を残し「大概のことはやりましたからね」と自負をのぞかせる半面、好奇心、探究心が衰えることはない。ベテランならではの境地で、さらなる高みを目指している。 
 ◇転機はエキストラのバイト

 「今まで仕事に穴をあけたことはないですし、何日も休まなければいけないような病気もない。長続きしているのは元気が一番ですね。俳優としてトレーニングはいつもやっていなければならないし、どんな役をもらっても常に体が動くようにはしています」

 そう持論を展開した国広のルーツは大学時代、エキストラのアルバイトをしていた京都の撮影所にある。

 「時代劇の町人や捕り手などによく駆り出されていたんです。そこで例えば緒形拳さんや林隆三さんが台本を読みながら打ち合わせをしていて、監督やカメラマンが来てどう撮ろうかという形で進行していく。人物がどう絡むのかを想像するのが楽しくて、面白い世界だなと思ったんです」

 大学を卒業後に上京し、松浦竹夫演劇研究所に入所。3年後に主役として舞台に立つことを目標に「大学より真面目に通っていた」そうだが、わずか1年で転機が訪れる。京都の知人に紹介された芸能事務所関係者に、履歴書を渡したのがきっかけだった。

 「写真を撮ってもらって、その数日後にオーディションがあるからと言われてTBSに行ってプロデューサーと面接。また、数日後に呼ばれて女の子とのセリフの読み合わせをして、その1週間後に“決まったから、国広”でした」

 もちろん「岸辺のアルバム」だが、それまで作品名は知らされず、当時小説を連載中だった新聞を読むように指示され図書館へ。語り部的な存在となる田島繁役だと認識したと同時に大きなプレッシャーがのしかかった。

 「1週間分くらい読むと出番が多くて、繁の目を通した家族の話だと思ったんです。セリフも全体の3分の1くらいは、僕が一人でしゃべっている。こんな役ができるのかと、うれしさと緊張感が高まってきました」

 ◇竹脇無我さんからの“激励”

 撮影前には合宿状態での演技指導を受け、メイン演出の鴨下信一氏の下で鍛えられた。右も左も分からないため、理不尽さを感じることも多々あったが、これが俳優としてのベースとなった。

 「僕が詰まったわけでもないのに、どこかでNGが出たら怒鳴られる人身御供は僕とタイムキーパーの女性と決まっていました。本当に夢中でやっていたんですけれど、最終回くらいに竹脇無我さんとのシーンがあって、あの低い声で“凄いよな、この役は。これができれば怖いものなしだよ”と言ってもらったんです」

 ドラマは高評価を得て、国広も一躍アイドル的な人気を得た。さらに「今思えば運命」と振り返る、松崎しげる(69)との出会いとなったドラマ「噂の刑事トミーとマツ」で勢いが加速する。


 ◇刑事ものにコメディー色を

 「最初はお互いに探り合いながらやっていたんですけれど、5、6本やったらこれは何でもOKだなと思って、いろいろなアイデアを出し合って、監督と相談しながらやっていましたね」

 当時は「太陽にほえろ!」など硬派路線が主流だった刑事ドラマに、コメディー色も加えたバディものという新風を吹き込み、2シーズンで106話が放送される人気シリーズに。かつて京都の撮影所で見ていた光景を、自ら実践したことにもなる。「作り上げていく楽しさがありましたね。100%自分の思うようにはならないけれど、レギュラーでやっていると全員の動きが頭の中に入っていますから、いろいろと考えてシーンを作っていくのはひとつの楽しみでした」

 30~40代には表現の難しさに悩むこともあったそうだが、今では確固たるポジションを築いている。それでも、芝居の好きな度合いは今も「きっと上がっています」と相好を崩す。「初めての頃は何も分かっていなかったけれど、今はほとんど見えている中で楽しんでいますからね。若い頃は年配の俳優さんの存在感に圧倒されていましたが、自分が積み重ねて分かってきたのは、ありのままでいいのかなと。いろいろな役をやってきたけれど、まだこれだけしかやっていないという思いもあります。ここ数年はあるがままですが、今年は結構、映画にキーになる役どころで呼んでいただいているんです」。穏やかな語り口の中にも垣間見えた貪欲な姿勢。国広の姿を見て、役者に憧れる若者が現れるかもしれない。

 ◆国広 富之(くにひろ・とみゆき)1953年(昭28)4月23日生まれ、京都府出身の66歳。77年、TBS「岸辺のアルバム」で俳優デビューし、ゴールデン・アロー賞放送新人賞などを受賞。その後「噂の刑事トミーとマツ」、「ふぞろいの林檎たち」などの人気ドラマに出演し人気を確立。趣味は絵画、陶芸で各地で個展を開催するほどの腕前。

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