鮨職人・杉田孝明 最も予約が取りにくい江戸前鮨の名店のこだわりとは…
2019年11月01日 17:00
芸能
杉田氏の所作は美しい。目を閉じ、想いを込めて握る鮨はシンプルで、奇をてらったものはひとつもない。最初に出される鮨種(すしだね)はいつも小肌。程よい締め具合、酢飯との絶妙な調和、ほのかな甘みと香りに深い余韻、江戸前の花形にふさわしい極上の一貫だ。
毎朝、豊洲市場に自ら足を運ぶことを欠かさない。旬を大切に選び抜いた魚をいち早く店に運び、夕方の開店に向けて6人の弟子たちと仕込みに入る。20種類の魚を同時におろす厨房はまさに時間との戦い。いくつものタイマーが鳴る中、魚をさばき、塩でしめて、酢をくぐらせる。そのひとつひとつの丁寧な手当てが、杉田氏の高い評価につながる。
切りつけにも一手間加えた握りは、杉田の人柄に似て、フワッと丸く、優しい味わい。鮮度に頼ることもなければ、大きさを競うこともない。流行とは一線を画し、酢飯と魚タネ、心と技が一体となって奏でる豊穣のハーモニー、鮨の王道を極める鮨職人に密着する。