ともに前掛かり 珍しい長考の応酬 渡辺王将2歩損でも不敵 広瀬八段仕掛けた3五歩
2020年02月21日 05:30
芸能
興味深いやりとりもあった。渡辺の40手目△6五桂に投入した時間が57分。対する広瀬の応手▲5五歩は49分の消費だ。51分かけて投入された渡辺の48手目△6二飛に対し、広瀬が49手目となる封じ手の意思を示すまでに刻んだ時間は56分。長考には長考を。波長は絶妙にシンクロしている。
ともに「欧州サッカー観戦」という共通の趣味がある。5年前には親しい観戦記者を含め3人でイタリアに赴き、セリエAのACミラン対トリノを観戦。よりによってアウェーゴールが決まってしまい、殺伐とした雰囲気の中でスタジアムを命からがら?脱出したエピソードを持つ。将棋連盟内のフットサル部でも積極的に活動する両雄だ。タイトルを争う盤上で無形の共通項が存在してもおかしくない。
早々に軽いジャブを投げかけた広瀬を見て、王者渡辺もしきりに突っ掛ける。ともにディフェンスラインを押し上げての前掛かり状態。「それほど激しくはならなかったなあ、という感じですかね」が初日を終えた渡辺の穏やかな所見だった。コマ割りでは実質2歩を損しているにもかかわらず。
駒箱を盤上に乗せて一夜の休戦を迎えた対局室から、西に見える山の端にはわずかに明るさが残っている。真冬に開幕した王将戦7番勝負も中盤戦。春が近い。
《封じ手は?》
▼立会人深浦康市九段 ▲3七桂の可能性もあるが▲6四歩ではないか。飛車を近づけて桂得を狙っていく。
▼副立会中田宏樹八段 ▲6四歩。相手の攻め駒を取りにいく。この一手で対局が激しくなる可能性も。
▼記録係木村友亮二段 ▲6四歩になるだろう。これ以外の手だと、先手が妥協している印象を受ける。