比嘉愛未 “一人旅”が役者人生の活力 地図だけ手にフラリ「もっともっと冒険したい」
2020年03月01日 10:30
芸能
「旅行代理店で航空券とホテルだけ予約して、最低限のものしか持ってこない。服は着回せばいい。旅行の計画は立てないで、地図を見て気になった方向に行くだけです」
現地の川辺に雰囲気のいいカフェを見つけた。入ると開店前なのにすでに予約で満席。残念がっていると、初老の男性に「どこから来たの?」「1人?」などと声を掛けられ、カタコトの英語で返した。
「なんと、1席空けてくださったんです。この方、オーナーさんなんですって。“せっかくの旅を残念な思い出にしてほしくない”と、いつも特別客用に空けている席に座らせてくれました」
リバーサイドからの絶景を前にぜいたくなティータイム。異国の地で人の善意にも触れ、忘れられない思い出になった。
「一人旅ってこういうラッキーなことがたくさん起きるんですよ。言葉の壁はあっても、素敵な出会いで心の壁が一気に縮まる。だから好きなんです」
一人旅をするようになったきっかけは、13年公開の初主演映画「飛べ!ダコタ」。ロケで1カ月ほど訪れた新潟・佐渡島で、撮影の合間に1人で島を散策したことだった。天然のトキのつがいを目撃したり、出会った現地の女性と手紙を送り合う友人になるなど、貴重な体験が続いた。
「最初は徒歩で、そのうちバスにも乗るようになって。出会いもあって楽しかった。冒険の旅。言葉も文化も違う海外でやったらどうなるんだろうと思って挑戦してみました」
初の海外バージョンは13年、米ニューヨークだった。ホテルでもレストランでも、訪れた劇場でも、ひたすら身ぶり手ぶりで相手に意思を伝える「怖いもの知らず」の強心臓。旅のお供は、アロマセラピストの母親が比嘉をイメージしてブレンドしたアロマオイル。「これを嗅ぐとどんな場所に行ってもコンディションを整えられる。必需品です」。これまでフランス、スペイン、モロッコ、タイ、香港などを訪れた。
旅の経験が仕事にも生きている。ドラマや映画に臨む際は、旅前と同様、あれこれと考えず、役を作り込まないで作品に飛び込む。現場で共演者らと楽しみながら役を作り上げていくのが比嘉流だ。
「役作りは役者さんや脚本に引っ張ってもらってできるもの。独り善がりではできないので、柔軟性を持つことを心掛けている」
30代に入り、出演作は年に4、5本とハイペースなスケジュールになった。物語に欠かせないキーパーソンを演じることが多く、作品に溶け込む演技に定評がある。現在放送中のテレビ朝日ドラマ「ケイジとケンジ~所轄と地検の24時~」(木曜後9・00)でも、キャラの濃い熱血刑事(桐谷健太)とエリート検事(東出昌大)に挟まれ、振り回されながらも2人を絶妙に操る難役を好演している。
「旅と仕事はつながっている気がします。どんどん経験して失敗も成功もした方が深みが増す。役者は全ての経験が仕事につながる職業なので、もっともっと冒険がしたい」
06年に単身で上京した時から女優としての旅は続いている。翌07年にNHK連続テレビ小説「どんど晴れ」のヒロインに抜てきされ、すぐに全国区となったが、おごることなく演技力を磨いていた。比嘉の武器は旅先で表れるような探究心と行動力。自分の殻を脱し成長していくために、冒険の旅を突き進む。
≪ドラマ「ケイジとケンジ…」で検察事務官役≫比嘉は、検事の東出と仕事のパートナーで、刑事の桐谷とは兄妹。東出には好意を寄せられており、何かと仕事でぶつかる男2人に挟まれているが、2人を褒めたり突き放したりして巧みに扱う“猛獣使い”のような存在でもある。「やっとテンポをつかんできたと思ったらもう終盤。チームワークが良いので別れが寂しい」。ドラマ開始後に不倫騒動が勃発した東出に猛バッシングが起きたが、ドラマは打ち切りなどはなく、12日に全9話の最終回を迎える。
◆比嘉 愛未(ひが・まなみ)1986年(昭61)6月14日生まれ、沖縄県出身の33歳。03年にスカウトされ、沖縄でモデルデビュー。05年に映画「ニライカナイからの手紙」で女優デビューし、高校卒業後の06年に上京。「どんど晴れ」ではドラマ初挑戦にしてヒロインを演じた。フジテレビ「コード・ブルー」シリーズにも出演。1メートル69。血液型B。