没後1年連載「ショーケンの遺産」(2)萩原健一の強い意志が「太陽にほえろ!」の伝統を築いた
2020年04月15日 10:00
芸能
![没後1年連載「ショーケンの遺産」(2)萩原健一の強い意志が「太陽にほえろ!」の伝統を築いた](/entertainment/news/2020/04/15/jpeg/20200414s00041000192000p_view.jpg)
殉職シーンを作ろうとしたのはドラマを降板するためだった。
「このドラマに出たのは、ワンクール13本で終わると聞いたからなんだ。だけど、ワンクール撮り終えても一向に終わる気配がなかった。だから、自分からプロデューサーに『降ろしてください』って伝えてたんだよ」と萩原さんは振り返った。
視聴率が好調だったため、なかなか降板の時は訪れず、殉職したのは第52話。マカロニらが凶悪な強盗殺人犯を追う物語だったが、その殺人犯と対峙(たいじ)している時に殺されるわけではない。事件が解決し、ほっと一息ついて帰宅するところで、通りがかりの物盗りにナイフで刺されてしまうのだ。しかも、それは立ち小便した後だった。
「周りからは『例えば大きな組織と対決して壮絶に死ぬのなら分かるけど、立ち小便してチンピラに刺されるなんて考えられない』って反対された。相手が組織なら、その後、敵討ちの物語にしやすいからね。だけど、おれは事件が解決した後、気を抜いた時に刺されるのがいいと思ったんだ。人間、ふと魔が差す時って、あるだろう!?おれは、犬死にしたかった」と萩原さんは説明した。
ヒーローの犬死に。萩原さんが考えたその場面は、強敵との激しい対決の末に死ぬ場面よりも遥かに衝撃性が高かった。当時、放送した日本テレビには「なぜ、あんな殺し方をするんだ!?」と抗議の電話が寄せられたものの、結果として、刑事の殉職シーンは「太陽にほえろ!」の伝統となった。松田優作さん、勝野洋、宮内淳、沖雅也さん…。その伝統のいしずえは、周りの反対を押し切って名場面を作り上げた萩原さんの強い意志だった。
「あの後、殉職が定番になるけど、それもどうかと思うよ。中には『おれは絶対に死にたくない』って突っ張る俳優がいても良かったんじゃないかな」と萩原さんは笑った。(牧 元一)