大河「麒麟がくる」 斎藤道三役・本木雅弘の挑戦は成功に向かっている
2020年04月27日 13:00
芸能
「麒麟がくる」制作統括の落合将チーフ・プロデューサーはこのシーンを振り返り「迫真の演技で息をのんだ。撮影の時間が限られる中で、どう本木さんに最高の環境で芝居をしてもらうか、やきもきしていたことを覚えている。限られた状況の中でもベストを出してくれる本木さんに圧倒された」と、たたえた。
私は実はこれまで、道三と本木はミスマッチなのではないかと考えていた。道三が狡猾(こうかつ)な政治力を持ち、金銭への執着も強い人物なのに対し、本木は純粋で真っすぐな印象の役者で、正反対のタイプの人間が演じているように見えた。ところが、26日の放送で、利政から道三になり、丸刈り頭になってから、その考えが変わった。間違いなく、本木が道三に見えた。
落合氏は「私自身も、初めてリハーサルであのようなキャラクターの作り込み、いま皆さんが目にしている道三を見た時、驚いた。思えば、本木さんは、道三をオファーされて引き受けた時から、あの作り込みをしてみたいと思っていたのだろう。そして、その作り込みに自信があったのだと思う」と明かした。
本木にとって、一見ミスマッチの道三を演じることは大きな挑戦だったに違いない。出演したNHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、自分とは正反対の悪役を演じることで新境地を開こうとした思いを明かし、「難しさと面白さがある」と話していた。私は、その試みは26日放送の演技によって、成功に大きく近づいたと思う。
道三の登場シーンはこれからクライマックスを迎える。落合氏は「やはり長良川の戦いの折、息子の高政とどう向き合うのか、最も信頼する家臣の明智光秀(長谷川博己)とどう向き合うのかが最大のヤマ場。そこには運命に翻弄(ほんろう)され、時代に立ち向かった1人の武将の悲しみのようなものが表現されていると思う」と語る。きっと、そこで本木の挑戦の成功を確信できるだろう。
◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在はNHKなど放送局を担当。