ビートルズ最後のアルバム「レット・イット・ビー」発売50周年 ジョンとポールがハモる奇跡を再確認
2020年05月13日 12:10
芸能
ほこりにまみれたジャケットを開くと、曲目と歌詞が記された紙が入っていた。紙の上部に「ユナイト映画 サウンド・トラック盤 レット・イット・ビー」と書かれている。そう言えば、同名タイトルのドキュメンタリー映画(1970年公開)を何かの機会に見た記憶がある。あの映画も、いつか、もう一度見てみたい。
アナログ盤はサイド1に7曲、サイド2に5曲。デジタルであれば12曲続けて聞くのだが、アナログ盤では7曲目の「マギー・メイ」が終わると、レコード針を上げ、盤を裏返して、また針を落とし、「アイヴ・ガッタ・フィーリング」を聞く。その時間的空白を今は新鮮に感じる。
このアルバムの良さはライブ感だ。ジョン・レノンとポール・マッカートニーのボーカルの混ざり具合が良く分かる。実質的なラストアルバム「アビイ・ロード」の方が圧倒的に世間の評価が高いが、私は「アビイ・ロード」のように作り込んでおらず、メンバーの息づかいが聞こえてくるような「レット・イット・ビー」が好きで、昔からよく聞いていた。
特に1曲目の「トゥ・オブ・アス」が素晴らしい。ポールが主旋律を歌い、ジョンがハーモニーをつけているのだが、個性の強い2人のボーカルがぶつかり合っているようで溶け合っているという究極のデュオを聞くことができる。曲作りを含め、こんな天才2人がよく同じバンドにいたものだと、その奇跡を今あらためて感じる。
ジョンはもういない。ジョージ・ハリスンもいない。リンゴ・スターは7月7日で80歳になる。ジョンも生きていれば10月9日に80歳になるはずだった。
77歳のポールはまた日本で公演するだろうか。私が最後にポールを見たのは2017年4月27日の東京ドーム。1曲目に、ジョンがメインボーカルだった「ア・ハード・デイズ・ナイト」を歌ったのが感慨深かった。
あれからもう3年。ビートルズの新たな音楽コンテンツの発売やポールの今後の予定は全く見えない。今は静かに待つことにしよう。懐かしいアルバムを聞きながら。
◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在はNHKなど放送局を担当。