「スカーレット」脚本家が明かす林遣都への信頼感 新作ト書きに詳細書かず「魅力を追い続けると思います」
2020年06月11日 11:00
芸能
林が演じるのは商事会社勤務・望月勇人、会計士・望月泰斗、茨城在住の農園経営・望月三雄。29歳の一卵性三つ子。勇人は子供の頃から明るく、すべてノリで生きてきたお調子者。今の会社も亡き父のコネで入ったが、入社して早7年。さすがに仕事はノリやコネだけで乗り切れない。自他ともに認めるポンコツで、会社を辞めたいとさえ思っていたところに緊急事態宣言が発令された。テレワークやオンライン会議など仕事環境が一変したこの3カ月。落ちこぼれのサラリーマンの勇人は一体どうなったのか。宣言が解除されたある日、勇人を案じた兄・泰斗と弟・三雄が引っ越したばかりの勇人のマンションを訪ねる…。
三つ子の設定や劇中登場する“あるラーメン”は以前から温めていたものではなく、今作の着想。水橋氏は「三つ子というアイディアに溺れないように気を付けました。決して身内受けで終わらないよう、三つ子という設定は書いている時は忘れました」と振り返った。
今年3月、NHK FM「岡田惠和 今宵、ロックバーで~ドラマな人々の音楽談議~」(隔週日曜後6・00)にゲスト出演。「ちゅらさん」「おひさま」「ひよっこ」と朝ドラ3作を生んだ脚本家の岡田惠和氏(61)と語り合った。水橋氏は「1シチュエーションのドラマは全然平気。1日、茶の間でも平気」。「スカーレット」も見事だったが、マンションの一室を舞台に展開される今回の会話劇は、まさに真骨頂と言える。
「1シチェーションが好きというより、限られた制約を楽しめることができるよう、フジテレビに育てられたんです(笑)。私はそもそもフジテレビでデビューさせていただき、その後も連ドラをやらせていただく中で、不自由さも面白がるようにと散々鍛えられてきたんです。なので今回も面白く取り組ませていただきました。岡田さんもWOWOWでリモートドラマに挑まれていましたが、メールでやり取りした時に似たようなことをおっしゃっていました。(会話劇は)描くにおいて、登場人物を愛すること。俳優さんを信頼し、愛し敬うこと。そうすると、何を書いていても楽しいです。今回もそうでした」
派手さこそないものの、キャラクターの機微を生々しく描き出し、愛すべき何気ない日常=「いつもと変わらない1日は特別な1日」を丹念に紡ぎ上げた「スカーレット」。林は陶芸家のヒロイン・川原喜美子(戸田恵梨香)を支える幼なじみ・大野信作を好演した。
水橋氏は「今回、ト書きには事細かな感情の様子を書きませんでした。林さんなら読み取ってくれるだろうし、ご自分のものとして演じてくださるだろうと思って」と信頼関係を口にし「『スカーレット』という朝ドラで長期にわたってご一緒したことが、思っていた以上に深い信頼感を生んだのだなぁと、書き出して初めて実感しました。大げさではなく、私は林遣都という役者の魅力を、今後ずっと追い続けると思います」と語るほどだった。
林との次回作があるとしたら?と水を向けると「被災地を舞台にした学校の先生」「不器用で不格好で、どうしようもなく愛しい男女のラブストーリー」と企画案。偶然にも、中江監督も「今回やった次男(勇人)のような、不器用な男のラブストーリーをやってみたいですね」。3人の再タッグを期待したい。
林も「昨年から今年にかけて、水橋さんと中江さん、このお二人との出会いは自分の中での大きな出来事でした。もっと水橋さんの描く人間を演じたいと思いましたし、中江組をもっと経験したい、またいつか参加したいという気持ちがあったので、まさかそのお二人で、しかも出演者が自分だけという形で、声を掛けていただけたというのは、とてもうれしかったです」と役者冥利に尽きる様子。
水橋脚本については「本当に大好きなんです。昨年から今年にかけて1年弱、『スカーレット』で1人の人間を作っていただいて、それを演じていて、ずっと感動しっぱなしでした。水橋さんの見てきたものや、人生観や世界観、笑いのセンス、すべて本当にとても好きで、演じ甲斐がありました。また水橋さんが生み出す人間を演じたいと思っていたんですけれど、まさかこんなに早く、しかも3人も書いていただいて演じることができるというのは、自分にとっては大きな喜びでした」、中江演出については「昨年『教場』で初めてご一緒して、感銘を受けたというか…当時も話していたのですが、中江組の雰囲気、演出…映像作品の現場って、こうでないと、と思うことが多々ありました。今回も、それをより強く感じました。もの凄い分量と大変な撮影を短い時間で皆さんされていて。そんな現場が自分にとって凄くプラスで、こういう監督の下でもっと演じるべきだなと改めて思い知らされました。今回、出演者が1人で、これだけマンツーマンで演出していただけるというのは今後の自分の財産になると思いますし、大きな作品になりました」と語り、思いがけず早く訪れたチャンスに真正面から向き合った。
水橋氏は最後に「再放送も配信の予定も今のところないようなので、是非、当日放送をお見逃しなく」とメッセージ。40分、林オンリーの“林遣都劇場”に浸りたい。